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    maimai_kizaki

    @maimai_kizaki

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    maimai_kizaki

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    即興あさきどバレンタイン。
    結局、間に合わず( 'ω')クッ!

    チョコレート魂2月14日、世間は俗に言うバレンタインデー。元は外国の行事であれど、その文化は日本でも浸透している。節分に並ぶ2月の風物詩であり当日日となれば表も裏も関係なく世間は専らその話題で持ち切りだった。

    各言う関西系極道組織として名高い天王寺組もその世間の賑わいに乗っかるかのように血なまぐささとは無縁な甘い香りがその日ばかりは事務所内の至る所で漂っていた。
    シマの巡回後に帰還するその誰も彼もが皆一様に華やかに梱包された小包を抱え戻ってくる。
    守代を貰う店なり近所のご贔屓様なりからか、義理だか本命だか分からない数の荷物を抱えて来る組員の出入りを一瞥し、城戸丈一郎は溜息を零していた。
    城戸派に属する舎弟達から見ればあからさまな兄貴分の浮かばれない顔や溜息はバレンタインなんぞに浮かばれている自身達に呆れているか、はたまたそんな組員達の仕事への怠慢を嘆いてるのだろうという解釈であった。が、実際には検討違いである事を知るのは当人のみであった。

    (…今回もまたアレ見なあかんのかなぁ)

    城戸がそうして物思いにふける間にもまた事務所の出入りが開く。
    扉の前に立つ組員の姿を見た彼はまた先程よりも盛大な溜息を吐いた。
    本来ならば様子のおかしい兄貴分を弟分が見たならば誰かしらは心配し、声を掛けたところだろう。
    しかし、先程まで自身に釘付けだった組員達の視線は帰還した人物、自身の弟分である浅倉、明確に言えば何時何処で誰に貰ったのかと問い掛けたい程に山ほどの梱包を両手に抱え帰還してきた彼に皆一様に気を取られた為に誰にも気遣われる事はなかった。

    「浅倉の兄貴、今年も凄いチョコの数ですねぇ」
    「ああ、ほんまにな。持って帰るのに難儀するわ毎回」
    「さっすが兄貴、そんなん俺も言うてみたいですわぁ」
    「そんなに欲しかったらなんぼでもやるわ」
    「ええんですかっ?!」
    「おう、別に甘いもんそんな好きちゃうしな」

    (…)

    囁かな臨時報酬に盛り上がる舎弟達の賑やかな声と相反して、相も変わらず淡々と返事を返す弟分の様子をぼんやりと眺めながら無意識的な溜息を城戸はまた零す。

    自身も甘い物に目がないが、決して沢山のチョコを貰った浅倉が羨ましい訳では無い。
    強いて言うならば彼にお菓子を送る名目と共にメッセージを伝える事が出来る相手が羨ましいのかもしれないと自覚して1人、城戸はまた落胆していた。

    浅倉が自身と同じように天王寺組の門を叩くようになってからこの光景を散々と城戸は見てきた。
    毎年毎年、両手に抱えんきれんばかりのチョコを貰ってはそのどれもに手を付けず舎弟達に渡す様子を。毎年毎年、送る相手の気持ちをちょっとは組んだことあるのかと問いたくなる程に淡々とした態度を。

    聞こえてくる賑やかな声を遠巻きに、無意識的にそっと自身のデスクの引き出し、その奥にひっそりとしまっていた小さな包装紙を見つめ、また口から溜息を零す。

    (…ごめん。去年の自分。やっぱり今年もあかんっぽいわ)

    そっと1人内心でそう呟きながら

    城戸が浅倉にチョコを贈ろうと思ったのは1度ではない。
    そう思ったきっかけこそあやふやとなったが、気持ちは伝えてみたい。そんないつしか芽生えた小さな願い事はある日に突然チョコへと姿を変え、毎年毎年バレンタインにはひっそりと、自身のデスクに納まって待機している。けれども大量のチョコを抱え尚且つそれを意に介さない浅倉を見ては引き出しの奥にしまいっぱなしという行動を繰り返している。
    こうして自身の気持ちと一緒に奥底に閉じ込めたチョコはお役御免のまま毎年最後には自身の胃袋に入っていくという過程を繰り返している。

    (ビターにしてみたけど、あいつそもそも甘いの好きちゃう言うてたし、俺と一緒にファミレス来てくれる時もデザートなんて頼んでへんしなぁ。無駄やったかなぁ…)

    今年もまたその運命となるチョコを自分と重ね不憫に思いつつ、ここに来て妙に冷静になった城戸はある種の事を考え始めていた。

    どうせ消える思いならば今年くらいは自分の目につかぬ所で消化されても良いだろうと

    (…あの大荷物の中なら、バレへんやろ)

    幸いにも彼のセンチメンタルな心情にも賑わう輪の中に入り込み、隠密活動と同様に気配を消した行動にも気付くものは居らず、城戸はその梱包の山の中に混ぜるように自身の分身をそっと放り込んだ。

    直接でなくても違う形では伝える事が出来たのだからこれで良いのかもしれない。
    少しだけ去年より晴れやかな気持ちになれたのだからと自身にも自身の気持ちにも見切りをつけてそっとデスクに城戸は戻ったのだった。




    「浅倉の兄貴ー、ほんじゃあ俺はこのチョコ貰いますねぇ」
    「待てや、それはあかん」
    「え、」
    「それは俺のんや。他のにせぇ」
    「なんぼでもくれる言いましたやんっ」
    「…ようやく貰えたんや、逃してたまるか」
    「へ?何か言いました?」
    「何もないわ」

    そんな会話も、自身をじっと見つめる浅倉が居たことも城戸が知る事になるのは来年の話

    END
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