神室町の床屋2…ということがありまして、そこから風間さんとは随分長いお付き合いをさせていただきましたよ。
そうそう、まだお時間ありますか?もう1人大事なお客様がいらっしゃいましてね。ええ。ありがとうございます。
その方は風間組の若頭で柏木さんとおっしゃっいました。
初めていらしたのは風間さんの紹介でした。いかにも人に良さそうな青年という感じでしたが、一度キレると止められないガキでね。
あれには風間さんも苦労してたよ。
あの世界は面子が大事ですからね。今じゃインテリ系とか言うんですか、カタギ風の方も増えましたけど、特に当時はまず容姿で舐められちゃいけない。彼も随分気にしてました。
相談しましてね。剃り込みを入れたんです。そしたら後で眉も剃ってるもんだから、かなり気合い入ってるなと思いましたよ。
ある時、顔に一文字の傷をつけて来た時はびっくりしましたよ。「やっと箔がついたじゃないか」って言ってやったら、苦い顔してましたけどね。ははは。
平成に入ったくらいかな。いつもみたいに剃り込みにするのかと思ったら、下ろしたいって言ったんだ。
まぁ、お客さんが望む髪型にするのが仕事だから。でも、どんな腹積りだか気になるじゃない?そしたら「もう時代じゃない」って言うから、「お前にもそんな柔軟性があったんだな」って返してやりましたが。
彼も若頭から風間さんの後を継いで、東城会の若頭になって大出世しましたけど、ここだけの話、記憶は風間さんに連れられて来た頃のガキのままですよ。