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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんが機械の内部構造解説を見ているのを見て不機嫌になるルチの話です。

    ##TF主ルチ

    羞恥心 ソファに腰を下ろすと、テレビのリモコンを手に取った。選局ボタンを連打して、画面に映る番組を変えていく。今日は特番が多いのか、あまり面白そうなものはやっていなかった。電源を切ろうとボタンに手をかけ、最後に教育番組専門チャンネルを選局する。
     テレビ画面に映し出されたのは、興味深い映像だった。企業が一般販売しているロボットを解体して、内部構造を解説しているのである。ラインナップも幅広くて、工場で動いているようなものから家庭用ペットロボット、町では滅多に見かけない人型アンドロイドまである。僕がチャンネルを変えた時には、ペットロボットの解説が行われていた。
     しばらく画面を見ていると、解説は人型アンドロイドへと移っていく。イベント会場の受付で展示されているような、人間そっくりのものだった。表面は肌を模した装甲で覆われ、顔は人形のように彩色されている。すぐに作りものだと分かるのは、表情がイラストタッチだからだ。
     テレビの中では、開発会社のスタッフが構造を説明していた。人工皮膚はリアリティを出すために、実際に女性の肌に触れて調べたのだそうだ。捲られた皮膚の下には、人間のような骨格や関節が埋め込まれているらしい。表情をイラストにしているのは、不気味の谷現象を避けるためなのだそうだ。
     テレビから流れる解説を聞きながら、僕はルチアーノのことを考えていた。あまりに人間そっくりだから忘れてしまうが、彼も未来で作られた人型アンドロイドなのだ。肌に見えるものは表面装甲で、下には金属の骨格が埋まっている。ちょうどテレビで紹介されているアンドロイドのように、中身は電子機器とコードがぎっしりなのだろう。
     そう思うと、難しい話も面白くなる。テレビに映る体内の構造とその仕組みを、僕は興味深く聞いていた。このロボットは会話の受け答えを売りにしているから、AIシステムに多くの領域を割いているらしい。とは言ってもルチアーノの足元にも及ばないから、そもそものシステムが違うのだろう。
    「おい、上がったぞ」
     テレビに見いっていると、背後から声が聞こえてきた。夢中になりすぎて、近づいてくる足音に気づかなかったらしい。声のした方を振り返ると、寝間着姿のルチアーノが立っていた。
    「ありがとう。これが見終わったら行くよ」
     答えてから、僕はテレビへと視線を戻す。解説もいよいよ大詰めといったところで、本体からコードや基盤を取り外していた。僕の見ているものが気になったのか、ルチアーノもテレビへと視線を向ける。一瞬の間を開けてから、甲高い声を発した。
    「なっ……!」
     突然の大声に、僕は飛び上がりそうになってしまう。ルチアーノの方に視線を向けると、彼は顔を真っ赤に染めていた。テレビ画面を凝視しながら、わなわなと身体を震わせている。どうしたのかと思っていたら、こちらを睨み付けてきた。
    「何を見てるんだよ!」
     怒りに満ちた声が、真正面から飛んでくる。話の流れが分からなくて、僕は口を大きく開けてしまう。何が悪かったのかさえ、僕には理解できなかったのだ。
    「えっ?」
     しかし、ルチアーノの怒りは止まらない。鋭い瞳で僕を睨み付けると、感情のままに言葉を吐く。
    「君は、そういう趣味の人間だったのか? ロボットの中身を解体する映像なんて……しかも、女の身体を見るなんて、とんでもない変態だな!」
     ここまで言われたら、僕も黙ってはいられなかった。わけの分からないことで怒鳴られるなんて、気分のいいものではない。説明をしてもらわないと納得ができなかった。
    「待ってよ。どういうことなの?」
    「それを僕に言わせるのか!? この変態!」
     はぐらかしていると思ったのか、彼はさらに声を荒らげる。埒が明かないと思って、僕は厳しい言葉を告げた。
    「本当に分からないんだよ。説明してくれないと、ルチアーノのことを嫌いになるからね」
     痛いところを突かれたのか、ルチアーノが悔しそうに唇を噛む。小さな唸り声を発すると、渋々ながらも話してくれた。
    「……僕たちにとっては、中身の構造を晒すことは裸体を晒すことと同じなんだよ。表面装甲はただの装甲でしかないけど、内部機構は活動に関わるからな。場合によっては敵に弱点を晒すことにもなる。簡単に見せられるもんじゃないんだ」
    「そうなんだ……」
     彼の言葉を聞いて、僕はようやく怒りの意味を理解した。彼にとって僕の行為は、見知らぬ女の裸を見ていたも同然だったのだろう。道理で怒るはずだ。
    「それを、公共の電波で発表するなんて、人間は何を考えてるんだろうな。全く、デリカシーのないやつらだぜ」
     呆れたような、怒るような声色で、ルチアーノはさらに言葉を続ける。意味を知らされた後だと、見ていたことが恥ずかしくなってくる。居たたまれなさを感じて、すぐにテレビの画面を消した。
     静かになったリビングの中に、時計の針の音が響き渡る。気まずい沈黙が皮膚を突き刺して、視線を彷徨わせてしまう。言葉を待つことに耐えきれなくて、僕の方から口を開いた。
    「あのさ」
    「なんだよ」
     まだ怒りの残った声が、すぐ隣から聞こえてくる。怒らせてしまうだろうと思いながらも、言葉を止めることはできなかった。
    「……ルチアーノの中身も、見てみたいな」
    「誰が見せるか!」
     案の定、隣からは怒りの声が飛んでくる。そうは言われても、内部構造が隠すべきものだと聞いたら、見たくなってしまうのが人情というものだ。僕だって人間の価値観で恥ずかしいものを晒しているのだから、ルチアーノにも機械の価値観で恥ずかしいものを見せてもらってもいいのではないか。そんなことを思うが、ルチアーノには伝わらないのだろう。
    「全く、人間ってやつは」
     頬を赤く染めながら、ルチアーノは不機嫌そうに部屋を出ていく。それが怒りなのか照れなのかは、僕には判別できなかった。
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