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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチの上げそびれていたテキスト。暑がってるTF主くんがルチに「クーラーを入れろ」と言われているだけの話です。

    ##季節もの

    クーラー 部屋の電気を消すと、僕は布団の中に潜り込んだ。蒸すような初夏の気温が、じりじりと僕たちを包み込んでくる。窓を全開まで開けているのに、首筋には汗が滲んでいた。形だけ用意したタオルケットも、ほとんど身体を覆ってはいない。冷房なしで過ごすのも、そろそろ限界が近いようだった。
     シーツの上を転がると、僕はルチアーノに手を伸ばす。細い胴体に腕を回すと、身体が密着するように抱き寄せた。夏は機械も熱が籠るのか、ルチアーノの身体もぽかぽかと温かい。肌と肌が触れただけなのに、もう汗が滲んできた。
     熱の籠ったタオルケットを跳ね除けると、今度は肌に指を這わせた。今は夏の寝間着を着ているから、布地の下には素肌が晒されている。流れるように肌に手を伸ばすと、滑らかな感触を味わった。当たり前だが、アンドロイドの身体を持つ彼は、少しも汗をかいていない。こういうときには、彼の機械の身体を羨ましく思った。
     片手でシャツの下をまさぐると、もう片方の手を頭へと伸ばす。赤い髪を掻き分けると、わしゃわしゃと音を立てながら頭を撫でた。いつのまにか恒例となっていた、僕たちの眠る前のスキンシップである。彼も慣れているのか、喜びもしなければ抵抗もしない。
     いつも通りの流れなら、僕はここから深いスキンシップに入る。ズボンの奥に手を差し込んで、抵抗されなかった時だけが、彼からのOKの合図なのだ。そうなれば後は自重などせずに、彼の身体を味わうだけである。しかし、夏の始まるこの時期は、そんな悠長なことなど言ってられなかった。
     襲いかかる熱気に耐えきれずに、僕はルチアーノから両手を離した。ただでさえ気温が高いというのに、ルチアーノからは僕の体温以上の熱気が放出されているのだ。触れていた面はもちろんのこと、額や四肢の関節にも、生ぬるい汗が滲んでいる。あまりくっついていると、僕が熱気にやられてしまいそうだった。
    「暑いね。あんまりくっついたら、溶けちゃいそうだ」
     シーツの上で寝返りを打ちながら、僕は小さな声で呟く。自分の発する体温によって、寝転がっていたシーツまでもが燃えるような熱を放っていたのだ。適度に冷えていた布地も、すぐに熱されて温まってしまう。冷気を求めて、僕は再び寝返りを打った。
    「そんなの、冷房を入れたらいいだろ。クーラーを入れる電気代より、熱中症で入院する費用の方が高いんだぞ」
     呆れた様子で僕を眺めながら、ルチアーノは小さな声で呟く。冷却にエネルギーを使っているのか、その声は少し眠そうだった。ルチアーノにも影響が出ているとなると、少し心が揺れてしまう。でも、冷房をつけるには、今はまだ早い気がするのだ。
    「なんか、勿体ない気がして。まだ、三十度は越えてないし……」
    「そんなこと言ってると、あっという間に手遅れになるぞ。人間の身体は脆いんだ。もっと気を使いな」
     ルチアーノに畳みかけられて、僕は反論ができなくなってしまう。家で熱中症になる人の多くは、クーラーをつけていないことが原因だと言われている。彼らは自分の体力を過信して、命を危険に晒しているのだ。いつ僕がそうなってしまうかは、誰にも分からない。
     熱中症という言葉を繰り返しているうちに、不意に変なことを思い出してしまった。この単語には、有名な言葉遊びがあったのだ。この会話の流れで持ち出したら、ルチアーノも引っ掛かってくれるかもしれない。
    「ねえ、ルチアーノ。熱中症ってゆっくり言ってみて」
     さりげなくを装って、僕はルチアーノに声をかける。布団に入ったままのルチアーノが、ちらりとこちらに視線を向けた。すぐに視線を逸らすと、呆れながらもきっぱりとした態度で言う。
    「その手には乗らないよ。くだらないこと言ってる暇があったら、とっとと冷房をつけな」
     辛辣な態度で突き放され、僕は渋々ベッドから起き上がる。部屋の窓を全て閉めると、クーラーのリモコンを手に取った。温度設定を確認してから、本体に向けて運転ボタンを押す。鈍い稼働音を響かせると、それは冷たい空気を吐き出した。
     クーラーから流れる冷たい風は、真っ直ぐに僕たちの真上を流れる。五分も経たないうちに、室内は快適な温度になった。背中を湿らせていた生ぬるい汗も、冷気に触れて蒸発していく。ベッドの上に寝転がると、再びルチアーノに手を伸ばした。
    「涼しいね。文明の利器って感じだ」
     耳元で囁いてから、彼の身体に手のひらを伸ばす。もう熱気を気にしなくていいから、遠慮なく肌に愛撫を与える。彼も身体が楽になったのか、寝返りを打って僕に顔を向けた。そのまま顔を近づけると、唇と唇を触れ合わせる。
     僕が呆然としていると、彼はすぐに唇を離した。いたずらっぽく笑うと、僕の頬を指先でつつく。間抜け面を晒す僕を眺めながら、きひひと甲高い声を上げた。
    「変な小細工をしなくても、キスくらいいくらでもしてやるよ」
     からかうような言葉で、僕はようやく気がついた。突然の口づけは、さっきの言葉遊びの答えだったのだ。今になってこんなことをするなんて、ルチアーノはどれほど策士なのだろう。この男の子には、絶対に敵わないと思った。
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