Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 668

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。都市伝説番組がイリアステルの的外れな考察をしている様子をTF主くんとルチが見てる話。

    ##TF主ルチ

    都市伝説 椅子に腰を下ろし、温めたばかりのお弁当をつついていると、部屋の隅に光が走った。淡い金色の粒子が舞い散り、ひとつの人影を作り出していく。既に日常茶飯事となっている、ルチアーノの自宅訪問である。一瞬だけそちらに視線を向けると、僕は再び食事に戻った。
     リビングに足を踏み入れたルチアーノは、真っ直ぐにソファへと向かった。重い音を立てて腰を下ろすと、挨拶もせずにテレビのリモコンに手を伸ばす。
    「少し、テレビを借りるぜ」
    「おかえり。いいけど、どうかしたの?」
     含むような発言が気になって、僕は彼に問いかける。普段の彼であれば、断りなど入れずにリモコンに手を伸ばすのだ。わざわざ口にすると言うことは、僕に知らせたい何かがあるのだろう。その予測は正しかったようで、彼は嬉々として語り始めた。
    「ちょっと、面倒なことになっちまってさ。後始末が上手くいったかどうか、この目で確認してるんだ」
     手元のリモコンを操作すると、迷うことなくチャンネルを変える。テレビ画面に映し出されたのは、独特な雰囲気の番組だった。妙に静かなスタジオを背景に、男の人が何かを語っている。しばらく聞いていると、それが宇宙人に関する都市伝説だと分かった。
    「間に合ったみたいだな。ほら、君も見ておけよ」
     弾んだ声で告げると、彼は堂々とした仕草で足を組む。僕にテレビを見せるためなのか、いつもよりも左側に座っていた。彼の意図を汲んで、僕もお弁当を摘まみながらテレビを見ることにする。画面の中では、胡散臭いスーツ姿の男の人が、淡々と宇宙人について語っていた。
    「どうしたの? 急にこんな番組を見始めて。ルチアーノは、都市伝説なんて信じてないんでしょ」
     しばらく男の話を眺めてから、僕はルチアーノに声をかける。ルチアーノがつけたチャンネルは、有名な都市伝説番組だったのだ。宇宙人の実在や秘密結社の存在やAIの反乱やらという、眉唾な話を垂れ流すバラエティ番組だ。ルチアーノが好んで見るような番組だとは到底思えなかった。
    「まあ、見てなよ。すぐに分かるからさ」
     楽しそうにテレビ画面を眺めながら、ルチアーノはそんなことを呟く。彼にしては珍しい、期待の籠った声色だった。彼がそんなことを言うからには、何か意味のある話なのだろう。箸を動かす手を緩めると、テレビの方へと視線を向ける。
     スーツ姿の男が語ってたのは、宇宙人と古代人類の関係についてだった。彼によると、人類を今の知性を持つ生き物に進化させたのが、宇宙の果てから来た知的生命体なのだという。その証拠に、この地球上の至るところから、宇宙人の存在を確立させる証拠が見つかっているらしいのだ。しかし、宇宙人の存在を秘めておきたい国家権力が、発見された証拠を隠しているらしい。その事から、彼は宇宙人の証拠を知られることが、国にとって不都合になるのではないかと語っていた。
    「人間って、時々おかしなことを考えるよな。宇宙人が人に知性を与えたのなら、これまでの進化の歴史はどうなるんだよ」
     暗転していく画面を眺めながら、ルチアーノはそんなことを語る。どうやら今の話は、彼のお目当てではないようだった。次の話までのトークタイムを眺めながら、僕はお弁当に箸を伸ばす。一応、ルチアーノの言葉にも返事をしておいた。
    「まあ、これは都市伝説だからね。眉唾だなって思いながら聞くものだよ」
    「それくらい分かってるよ。でも、僕の気持ちにもなってみてほしいもんだね。自分の見てきた歴史を眉唾な予測で否定するなんて、おかしいったらありゃしない」
    「ルチアーノが見てきたことなんて、歴史のたった一部なんでしょ。案外、ルチアーノの知らないところでは、本当だったりするのかもよ」
     そんなことを話していると、次の話題が始まった。スタジオに別の男が現れると、堂々とした態度で語り始める。何が始まるんだろうと思っていると、ルチアーノがあからさまに声を潜めた。
    「ほら、始まったぜ。テレビに集中しな」
     不穏な気配を感じて、僕はテレビに意識を向ける。長めのオープニングトークが終わると、男は本題を語り始めた。その口から零れた単語を聞いて、僕は身体を強ばらせてしまう。彼の持ち込んだ議題は、秘密結社についてだったのだ。しかも、それは僕たちのよく知る組織……イリアステルについてである。
     絶句する僕を置き去りにして、男は話を続けていく。イリアステルは世界を股にかける巨大組織で、各地にメンバーがいるらしい。それは政治家や著名人も例外ではなく、政治を影で操ってるのだ…………。そこまで話が進んだところで、僕は思わずルチアーノを見つめた。男の語る組織の概要は、僕の知るイリアステルそのものだったのである。
    「ねえ、ルチアーノ。これ、テレビで放送して大丈夫なの?」
     胸の鼓動を抑えながら問いかけると、彼は不満そうに振り返った。鋭い瞳で僕を見つめると、尖った声で釘を刺す。
    「うるさいぞ。いいから、黙って聞きな」
     思ったよりも強い語調が飛んできて、僕はおとなしく口を閉じた。テレビの中では、スーツ姿の怪しい男が、イリアステルの解説を続けている。彼によると、メンバーだとされる人物の取引関係を探ることで、深い関わりを持つ企業をあぶり出したそうだ。箸を動かすことすら忘れて画面を見つめると、その男は勿体ぶった様子で断言した。

    ──この巨大な秘密結社を、影で操っている大企業。それこそが、海馬コーポレーションです。
     
    「え?」
     唐突に出てきた名前に驚いて、僕は思わず声を上げてしまう。海馬コーポレーションというのは、デュエルモンスターズや関連商品を販売している、シティ一を誇る大企業だ。カードそのものの製造はもちろん、デュエルディスクやカードプロテクター、その他関連グッズのほとんどのシェア率を独占している。この町に住む住人なら、知らない人はいないはずだ。
     でも、なぜ海馬コーポレーションなのだろう。確かに、イリアステルの取引相手のひとつには、この大企業の役員が含まれているはずである。しかし、それはただの取引相手であって、必要以上の関わりはないはずだ。そもそも、実際のイリアステルは、未来で発足した組織なのだから。
     僕がそんなことを考えている間にも、ルチアーノは楽しそうにテレビを見ていた。僕の反応に重ねるように、きひひと笑い声を上げている。自信満々な男の姿を眺めると、からかうような声で横槍を入れた。
    「ひひっ。こいつらは、何を言ってるんだろうな。そんなもの、全くの間違いなのにさ」
     しかし、テレビの中の男には、彼のツッコミなど届かなかった。自信満々な態度を保ったまま、考察の続きを語り続ける。彼らが導きだしたイリアステルの正体は、大まかにまとめるとこのようなものだった。
     彼らは、イリアステルが発足した地を、ネオドミノシティだと考えたらしい。モーメントの原型となるものが開発され、治安維持局が設立された頃に、その組織は生まれたのだと語っていた。そして、その目的は、デュエルモンスターズを操ることにあるのだと言う。その理由を、この男はこんな風に語っていた。

    ──デュエルモンスターズは、古代エジプトの儀式が元になっています。魂の宿った石板を操り、国や民の運命を決めていたのです。そして、その儀式を受け継いだデュエルモンスターズには、モンスターの精霊が宿っています。

    ──海馬コーポレーションの真の目的、それは、精霊の世界と現実世界を繋ぐことにあるのです。精霊世界へのコネクションを得られれば、私たちはデュエルモンスターズという儀式を介さずに、自由に精霊を操ることができるでしょう。それこそが、イリアステルが存在する理由なのです。

     そんな言葉で話をまとめると、男はスタジオから去っていった。本当のイリアステルを知る僕からしたら、的はずれもいいところな内容である。ルチアーノに至ってはおかしくて仕方ないらしく。ずっと笑いながらツッコミを入れていた。満足げな顔でこちらを振り向くと、甲高い声で捲し立てる。
    「なあ、聞いたか、今の? いったい、何をどう考えたら、あんな解釈になるんだろうな。海馬コーポレーションなんて、その辺にある企業のひとつじゃないか。それがここまで大きな秘密結社を作るなんて、常識的に考えたらあり得ないだろ」
     ケラケラ笑うルチアーノを眺めながら、僕は静かに箸を動かす。彼の見せたかった話が終わって、ようやく静かに食事が取れるようになったのだ。既に冷めてしまったお肉を、こちらも冷めてしまった白米と共に口に運ぶ。
    「でも、何も知らない一般人が考えたにしては、筋の通った話だと思うよ。イリアステルが未来の組織だなんて、ほとんどの人が知らないんだから」
    「だからって、もうちょっとましな考えができるだろ。企業の一部だと思われるなんて、神の代行者としては不本意だ」
     ぶつぶつと文句を垂れ流しながら、ルチアーノはテレビの電源を切った。ソファから腰を上げると、わざとらしい態度でこちらを振り向く。
    「まあ、これくらい的はずれなネタを流しておけば、真相に気づくやつはいないよな」
     その言葉を聞いて、僕は大きく目を見開いた。今のヒントとなる一言によって、彼の本当の目的に気がついたのだ。彼が語った任務というのは、つまりはそういうことなのだろう。頭の中で思考をまとめると、僕はルチアーノに問いかけた。
    「もしかして、今の放送内容は、イリアステルが作った話なの? ルチアーノの言ってた任務って、その作り話を確認すること?」
     疑問系を重ねながら尋ねると、ルチアーノはにやりと笑みを浮かべる。自信満々な表情で僕を見ると、勝ち誇ったような声色で言う。
    「そうだぜ。イリアステルの関係者は、マスコミにだっているからな。僕たちからやつらに働きかけて、作り話を流すように言ったんだ」
     彼の口から飛び出す言葉を聞いて、僕は改めて思い知る。イリアステルという組織は、恐ろしいほどの力を持っているのだ。結局、僕たち一般市民が見ているのは、イリアステルに統制された情報なのである。恐らく、彼らの取引相手である企業の幹部たちも、本当のことはほとんど知らないのだろう。
    「ルチアーノに言われなければ、本気で信じちゃうところだったよ。イリアステルってすごいなぁ」
     心から関心の声を漏らすと、ルチアーノは冷めた瞳で僕を見た。一度小さくため息をつくと、呆れたような声で言葉を発する。
    「君も、そのイリアステルの一員なんだぜ。ゆめゆめ忘れるなよ」
    「分かってるよ」
     答えてから、僕は少し考える。僕がイリアステルの一員としてできることとは、いったい何があるのだろうか。僕はただの一般人で、権力があるわけでも特殊技能を持っている訳でもない。そんなただの人間が、彼の力になれるのだろうか。
     まあ、そんな難しいことは、今は考えなくてもいいのだ。僕はルチアーノのタッグパートナーとして、いつも通りデュエルを続ければいい。難しいことを考えるのは、全部ルチアーノの役目なのだ。きっと、彼が望んでいるのは、そんな関係なのだから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏‼
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works