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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんの心の中の天使と悪魔がルチの姿をしているというネタテキストです。ギャグなので気楽に読んでください。

    ##TF主ルチ

    天使の囁き、悪魔の囁き カードショップに入ると、パック販売コーナーへと向かった。探しているパックが置かれていることを祈りながら、吊り下げられた見本に視線を走らせる。並んだパックの片隅に、ついに目的のタイトルを見つけた。
     僕は急いでダミーを手に取った。このお店が、本日三店目のカードショップだったのだ。探しているパックは少し古かったから、回転の早いお店には置いていなかった。商店街の片隅に並ぶ小さな店舗を回って、ようやく見つけ出したのだ。
     レジへ向かうと、ダミーを渡してパックを購入する。僕は箱単位で買うことが多いから、今回も一箱購入した。ぎこちない手付きで箱を袋に入れる店員さんを見ながら、一連の作業が終わるのを待つ。よく見ると、店員さんの胸には『研修中』の札がつけられていた。
     パックを袋に入れると、店員さんは何かを一緒に袋に入れた。渡された袋を受けとると、レジから離れて中身を確認する。袋の中には、おまけらしきパックが添えられていた。
    「えっ」
     パックの題字を確認すると、僕は声を上げてしまった。そこには、明らかに子供向けのキャンペーンタイトルが記入されていたのだ。見間違いじゃないかと思って確かめたが、書かれている文字は変わらなかった。
     僕は、店の入り口に移動した。壁には何枚かのポスターが貼られているが、キャンペーンに関するものはない。仕方ないから、端末を起動して確かめることにした。
     キャンペーン名を入力すると、すぐに目的のページに辿り着いた。画面をスクロールして、パック配付の対象年齢を確かめる。そこには、予想通り『小学生以下』の表示があった。
     僕はパックに視線を落とした。店員さんが研修中だったことを考えると、これは間違えて入れられたものだろう。返さなくてはならなかった。
     しかし、このパックには魅力的なカードが封入されているのだ。配付が子供限定で流通数が少ないこともあり、一部ショップではプレミア価格がついているのだ。これを入手できたら、かなりの収穫だった。
     パックを手にしたまま、僕は考え込む。人間的に正しいのは、前者の選択だろう。しかし、今の店内には誰もいないのだ。僕がこれを持ち帰ったところで、咎める者はどこにもいない。千載一遇のチャンスだった。
     僕の脳内に、黒い影が舞い降りる。影は僕の前でにやにやと笑うと、甲高い声で語り始めた。

    ──持って帰っちゃいなよ。元はといえば、店員が間違えたのが原因だろ。気がつかなかったって言えば、攻められることはないさ。

     それは、僕の心の中の悪魔だった。なぜか、黒い角と翼を生やしたルチアーノの姿をしている。彼はにやにやと笑うと、耳元で囁くように言う。

    ──ほら、このまま帰っちまえよ。ほしいんだろ、そのプレミアのカードが。

     文字通りの甘い囁きに晒されて、僕の心は揺れ始めた。確かに、彼の言う通りだ。これは店員さんのミスであり、僕には関係ない。このまま、知らんぷりすることもできるだろう。
     でも、それでは僕の良心が痛むのだ。悪いことをするのにも、精神力というものがいる。僕には、悪事に耐えられるだけの精神力が無かったのだ。
     仕方がない。ここは、心の天使を召喚しよう。僕の心の天使なら、悪魔を説得してくれるはすだ。そう思って、僕は心の声に耳を澄ませた。

    ──君は、そんなことで迷っているのかい? 相変わらず優柔不断なやつだな。そんなもの、答えは一つに決まっているだろう?

     僕の頭の中に、優しい声が響いてくる。脳内に姿を現した天使は、なぜか天使の輪と羽を生やしたルチアーノだった。さっきから、なんでルチアーノが出てくるのだろう。僕が彼のことを好きすぎるからだろうか。

    ──いいんだぜ。持って帰っても。君は、今まで頑張って戦って来たんだろ? これはそのご褒美だと思えばいい。何も疚しいことはないんだ。

     天使の姿をしたルチアーノは、にやにやと笑いながらそんなことを言う。清らかの姿には程遠い、悪人めいた言葉だった。こんなの、悪魔と悪魔だ。自分の連想に嫌気が差す。

    ──ほら、とっとと帰ろうぜ。こんなところでモタモタしてたら、ばれちまうよ。

    ──君は、これまでいい子にしてきたんだろ。ちょっとくらい悪さしたって、許してもらえるさ。

     二人の悪魔が、左右から僕に囁きかける。その声は、人間を誘惑する魔性そのものだった。このままじゃ、僕は悪い大人になってしまう。頭をぶんぶんと振ると、その幻覚を打ち消した。
     パックを手に取ると、僕はレジへと向かった。研修中の札を付けた店員さんに、さっきのパックを差し出す。不思議そうな顔をする店員さんに、題字を示しながら言った。
    「このパック、小学生以下限定キャンペーンのものですよ。袋に入ってたので、お返ししますね」
     そこで、ようやく相手にも伝わったみたいだった。慌てた様子でパックを受けとると、深々と頭を下げる。
    「ほんとだ! すみません。ありがとうございます」
     真面目にパックを返却する僕を見て、脳内のルチアーノたちは意識の奥へと去っていく。去り際に、彼らはこんなことを呟いていた。

    ──なんだよ。

    ──つまんねーの。

     レジ袋を下げると、僕はカードショップの外に出た。少しもったいないことをしてしまった気もするが、正しいことをしたのだからいいだろう。天の神様は、きっと僕のことを見ていてくれる。
     それにしても、どうして僕の想像する天使と悪魔は、ルチアーノの姿をしていたのだろうか。確かに、僕は彼に天使と悪魔のイメージを持っているが、この連想はあまりにも突飛だ。第一、ルチアーノの姿をした天使と悪魔は、どちらも発言が悪魔だったのだ。
     これは、さすがに本人には言えないな。そんなことを考えながら、僕は帰路についたのだった。
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