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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんが死ぬ夢を見て目を覚ますルチの話。孤独に怯えるルチがいます。シリアスです。

    ##TF主ルチ

    永遠の孤独 朝日が差し込む時間になると、この身体は自然と目を覚ます。窓から差し込む日差しを浴びながら、僕はゆっくりと身体を伸ばした。今日のエネルギー補充は十分だ。これなら、どんな任務もこなせるだろう。
     隣を見ると、青年が身体を横たえていた。彼は寝坊助で、放っておけば昼過ぎになるまで起きてこないのだ。この時間に起こすのもかわいそうだから、もう少し寝かせておいてやることにする。僕にも任務があるから、一人の時間は必要なのだ。
     リビングのソファに腰をかけると、端末の電源を起動する。資料のデータを呼び出すと、足を組んでから目を通した。
     僕たちの取引相手は、そのほとんどが人間だ。身体にシステムを持たない相手と仕事をするとなると、彼らの使うツールに合わせなければならない。少し面倒ではあっても、端末を使った連絡をしなければならなかったのだ。
     積み上げていた仕事を済ませると、いい時間になっていた。彼の部屋に戻ると、ベッドの隅に腰をかける。青年の顔を覗き込むと、布団越しに身体を揺らした。
    「起きろよ」
     しかし、その身体は少しも動かなかった。胴体を跨ぐように座ると、両手で頬を叩いてみる。パチンと大きな音が鳴ったが、彼は目を覚まさなかった。
    「起きろって」
     布団を捲り上げ、眠っている男の鼻を摘まむ。しばらく時間が経ったが、目が覚める気配はない。不思議に思って手を離したときに、ついに違和感に気がついた。
     彼の身体は、少しも動いていないのである。身じろぎをしていないとか、そういう次元の話ではない。生きている人間が必ずするはずの動きが、どこからも感じられなかったのだ。
    「○○○?」
     名前を呼んでも、目の前の身体は動かない。僕の背筋を、冷たいものが走る感覚がした。慌てて口元に手を当てるが、息は吐き出されていなかった。鼻に手を当てても結果は同じだ。
    「○○○!」
     両腕で肩を掴むと、彼の身体を揺さぶった。さっきまでそこにあったはずの体温が、いつの間にかなくなっている。彼は、本当に死んでしまったのだろうか。そう考えると、目頭が熱くなった。
    「嘘だろ……」
     呟くと、僕は彼の頬に手を当てた。さっきまで温かかったはずの素肌は、ひんやりと冷えている。眠っているかのような安らかな顔なのに、命の兆しは失われていた。
    「嘘だって言えよ」
     僕の両目から、熱いものが流れ始める。大切な人を失ったことへの自覚が、ようやく現れ始めたのだ。この世に、僕を受け入れてくれる人間なんてそういない。彼を失ってしまえば、僕は永遠に独りぼっちになるのだ。
     ぽろぽろと涙をこぼしながら、目の前の亡骸に手を伸ばす。頬に触れ、顎に触れ、唇に唇を触れた。温もりを失った唇は、僕を受け入れてはくれない。悲しみが溢れ出して、僕は彼の胸に顔を埋めた。
     こんなことになるなら、心なんて許さなければ良かった。この男を失ってしまったら、僕はどうやって生きていけばいいのだろう。僕はもう、彼無しでは生きていけないのに。
     しばらくすると、瞳から溢れる水が止まった。涙として流れる体液のストックが尽きてしまったのだろう。僕の身体は機械でできているから、体液も限られた量しか出ないのだ。
     僕はゆっくりと顔を上げた。目元に残っていた水分を拭うと、横たわる遺体に視線を向ける。そこにあるものを見て、僕は息を飲んだ。
     彼の身体は、骨だけになっていた。布団からはみ出した頭部は、真っ白な頭蓋骨と背骨の残骸になっている。慌てて布団を捲ると、さっきまで顔を埋めていたはずの胸も、骨と衣類だけになっていた。
    「うわぁ!」
     悲鳴を上げると、慌ててベッドの上から飛び降りる。目の前で起きている出来事が、何一つ理解できなかったのだ。どうして、彼は骨になってしまったのだろう。ついさっきまで美しい寝顔を晒していたのに。
     僕は頭を抱えた。目の前のおぞましい光景を、視界から追い出したかったのだ。混乱する頭を落ち着かせるように、机の下に潜り込んだ。

     気がついたら、真っ暗な部屋の中にいた。ゆっくりと身体を動かすと、ごそごそという音が響いてくる。頭が混乱していて、周りの状況が掴めない。自分がベッドの上にいるのだと気づくまでに、少しの時間を要した。
     あれは、夢だったのだ。いや、どう考えても夢だろう。人間が眠ったように死ぬことも、急に白骨化することも、現実の人間ではあり得ない。
     彼は、死んでなどいなかったのだ。安心が胸を満たして、大きく息を吐く。安堵したら、涙が溢れてきてしまった。『愛してくれる者を失った絶望』として産み出された僕にとって、愛してくれる者の死は何よりも恐ろしいのだ。
     両腕を伸ばすと、彼の背中を抱き締めた。人間の持つ生身の体温が、優しく僕の身体に伝わってくる。その温もりを噛み締めたくて、大きな背中に顔を埋めた。
     腕の中で、青年が小さく身じろぎをする。僕に抱き締められた感触で、目が覚めてしまったらしい。ごそごそと衣擦れの音を発すると、困惑したような声で言った。
    「ルチアーノ?」
     僕は何も答えなかった。答えたら、泣いていることがバレてしまうだろう。神の代行者としてこの世界に降りている以上、人間に弱味など見せたくなかった。
    「どうしたの?」
     問いを繰り返すように、彼は言葉を紡いでいく。僕が答えないと気が済まないみたいだった。最近の彼は、何としてでも僕の言葉を聞き出そうとしてくるのだ。以前はこうではなかったのに、いつの間にこうなったのだろう。
    「別に、どうもしてないよ」
     答える声は、やはり鼻声になってしまった。だから嫌だったのに。そんなことを考えるが、もう後の祭りだ。彼は変なところで聡いから、これで察してしまっただろう。
     彼は、何も答えない。ただ、静かに僕の抱擁を受けとめ、そこに存在している。恥ずかしいような安心するような気持ちになって、軽く彼の頬をつねった。
    「痛いよ」
     答える声は、少し眠そうだった。いつもは起きない時間だから、ぼんやりとしているのだろう。このまま眠って、すべて忘れてくれたらいいのにと、少しだけ期待してみる。
     いつか、彼は死んでしまうのだろうか。僕を置いて、この世からいなくなってしまうのだろうか。そうなったら、僕は永遠に独りぼっちだ。僕には、彼しか心を許せる相手がいないのだから。
     永遠の孤独を味わうくらいなら、僕は彼と一緒に逝きたい。神の代行者としての任務に反するとしても、僕はそんな願いを持ってしまう。それが叶わない夢であることは、僕が一番よく分かっていた。
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