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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。この前りんご飴を食べたので二人にも食べてもらった。ルチは咬合力が高そうだから飴を直で齧れそう。

    ##TF主ルチ

    りんご飴 ここ最近、シティ繁華街ではりんご飴というものが流行っているらしい。町の至るところで、丸いりんごの看板を見かけるのだ。店頭ではカット販売もしているらしく、一口サイズのりんごが入ったカップを持っている人をよく見かける。味も何種類かあるらしく、りんごの外側にはカラフルなコーティングを施されていた。
     その光景を見ていて、不意に思うことがあった。ルチアーノは、りんご飴というものを知っているのだろうか。彼はアンドロイドだから、データベースを参照すれば、どのようなものかは分かるだろう。しかし、知識としては知っていても、実際に食べたことがあるとは思えなかった。
     ルチアーノに、りんご飴を渡してみたいと思った。彼は子供らしいこととは無縁の生活を送っていたのだ。りんご飴に触れる機会など、ただの一度もなかっただろう。渡したときにどのような反応をするのか興味があった。
     それに、僕自身が気になっていたのだ。専門店で売られているりんご飴は、屋台のものとどのような違いがあるのだろうか。専門店を名乗るくらいだから、きっとよほど美味しいのだろう。
     僕は、繁華街のデパートに向かった。飲食店の立ち並ぶフロアに下りると、フロアマップで店舗を確認する。予想通り、デザートショップの並ぶ通りの片隅に、りんご飴専門店が入っていた。
     店舗の周辺は、若い女の子で溢れていた。元々がスイーツのエリアであることもあって、女の子が集まりやすいのだろう。少しの気まずさを感じながらも、女の子たちの後ろに並ぶ。ちらりと向けられた視線に、やはり緊張してしまった。
     十分ほど待つと、僕の番がやって来た。店頭に並ぶサンプルを眺めながら、プレーンのまるごとを注文する。少し悩んだが、一個を二人で分け合うことにした。
     受け取った飴は、ずっしりと重たかった。店名の印刷されたレジ袋に入っているが、小さすぎて棒の部分が飛び出している。取り出してみると、厚みのある飴がりんごの表面を覆っている。袋に包まれた飴は、艶々と輝いていた。
     持ち手の部分を掴むと、飴の部分を上にして握りしめる。僕の鞄は小さいから、大きさのあるりんご飴は入らないのだ。こうして手に持って歩いていると、子供の頃に戻ったような気分になる。ゆらゆらと左右に振りながら、軽い足取りで帰路についた。
     家のリビングには、既に灯りがついていた。今日は、ルチアーノの方が帰りが早かったらしい。カーテンを閉めていないから、部屋の中がうっすらと透けて見えている。玄関の扉を開けると、飴を後ろに隠して廊下を歩いた。
    「ただいま」
     ルチアーノの姿が見えると、リビングに足を踏み入れる前に声をかけた。彼は、尊大な態度でソファの上に腰を下ろしている。視線だけを僕の方に向けると、気のない様子で返事をした。
    「ああ、帰ったのか。遅かったじゃないか」
    「遅くなってごめんね。今日は、お土産を買ってたんだ」
     答えながら、僕はルチアーノの近くへと近づく。不自然に後ろに手を回した僕を見て、彼は怪訝そうな表情を見せた。
    「君、挙動が不審だぞ。何を企んでるんだよ」
    「悪いことじゃないよ。ほら、見て」
     そう言うと、僕は手を前に差し出した。袋に包まれたままのりんご飴を、手のひらに乗せてルチアーノに見せる。彼はそれを一瞥すると、さらに眉を歪めた。
    「なんだよ。それ」
    「りんご飴だよ。お祭りの屋台とかに売ってる、りんごに飴をかけたお菓子。ルチアーノも知ってるでしょ」
     説明を聞いて、ようやく彼にも伝わったようだった。僕の手から飴を取り上げると、レジ袋を開けて中身を取り出す。
    「なんだ、そんなものか。袋に入ってたから分からなかったぜ」
     答えながらも、彼の手はりんご飴に向かっていた。個包装の袋を強引に破り、飴を包んでいたペーパーを剥がす。ようやく、赤くて艶々した本体が姿を表した。
    「ふーん。これがりんご飴か」
     感心したように呟いてから、ルチアーノは飴を持ち上げる。電灯の光を反射して、表面はキラキラと輝いていた。あまり中が透けていないから、大きな棒つきキャンディーのようだ。くるくると回してから、口元へと持っていく。
    「待って!」
     大きな声に、ルチアーノが顔を上げる。僕に向けられた視線は、不満そうに光を失っていた。
    「なんだよ。食べろってことじゃないのか?」
    「そうなんだけど、そのままは食べれないよ。飴で歯が折れちゃうから」
     このりんご飴を買ったとき、店員の女性は、商品と一緒に一枚のチラシを差し出した。そこには、まるごと販売についての注意書が書かれていて、このような文句があったのだ。
    ──飴は大変固くなっていますので、必ず切り分けてからお召し上がりください。切り分ける際は、怪我に注意してください。
     それを伝えると、ルチアーノはくすくすと笑った。再び飴をくるくると回すと、ニヤニヤと笑いながら答える。
    「固い飴を齧ったくらいで、僕の歯が折れるかよ。これくらいどうってことないぜ」
     自信満々に飴を口元に運ぶと、大きな口を開けた。ちらりと真っ白な歯が見えて、少しだけ心臓が音を立ててしまう。そのまま、歯は飴の上に乗り、固いコーティングに食い込んでいく。
     そして。
     ガリッと豪快な音を立てながら、飴の表面にひびが入った。さらに奥に食い込ませ、りんごごと表面を齧り取る。口を離すと、シャクシャクボリボリと音を立てながら、口の中のものを咀嚼した。
    「すごい……」
     圧巻の光景に、ついついそんなことを呟いてしまった。ごくんとりんごを飲み込むと、ルチアーノはこちらへ視線を向ける。僕に視線を返すと、不満そうに唇を尖らせた。
    「何見てるんだよ」
    「すごいなって思って」
     こんなに固そうな飴を、顎の力だけで噛み砕いたのだ。咬合力もすごいけれど、折れない歯の硬度もすごい。未来の技術に感心するしかなかった。
     ルチアーノは、黙って飴を口元に運んだ。大きく口を開けると、りんごが剥き出しになったところから歯を食い込ませる。バリボリと音を立てながら、大きな一口を齧り取った。
    「じろじろ見るなよ」
     口の中のものを飲み込むと、彼はじっとりとした視線を向けてきた。その一言で我に返り、僕は慌てて視線を逸らす。確かに、あんまり見られていたら、食べることに集中できない。お腹も空いたことだし、夕食の準備をすることにした。
    「僕も食べたいから、半分取っておいてね」
     声をかけてから、冷蔵庫を開けて中を覗き込む。自炊は全くしないから、冷蔵庫の中はほぼ空っぽだ。ソース付きの麺とカット野菜があるから、焼きそばくらいは用意できそうだった。
     麺を焼いていると、隣から足音が聞こえてきた。レジ袋を手にしたルチアーノが、手元を覗きこんでくる。りんご飴の入った袋を、視界に入るように差し出した。
    「ほら、半分残してやったぜ」
    「今は手が離せないから、そこに置いといて」
     答えると、黙ったまま調理台の上に置く。半分でもそれなりに重いようで、ごとんと鈍い音が響いた。
     完成した焼きそばを盛ると、りんご飴と一緒に机の上に運ぶ。手早く麺を啜ると、わくわくしながら隣に置いてあった袋に手を伸ばした。お土産とは言ったものの、お店で受け取った時から食べるのを楽しみにしていたのだ。
     袋の中には、半分になったりんご飴が転がっていた。表面が少し溶けて、べったりと外袋に張り付いている。中央の棒はすっぽ抜けてしまったみたいで、袋の中に添えられていた。肝心のりんごは、芯を残すように綺麗に齧られている。
     袋から取り出すと、ゆっくりと口に運んだ。今さらだけど、ルチアーノが直で齧っているから、これは間接キスになるのだ。変な意識をしてしまって、気持ちが少し高ぶってしまう。普段から散々キスをしているけど、こういうシチュエーションは別なのだ。
     りんごの部分に歯を立てると、飴を噛み砕こうとする。思っている以上に固くて、ちょっと苦戦してしまった。飴を咥えたまま四苦八苦する僕を見て、ルチアーノが笑いながら近づいてくる。
    「君、間抜けなことになってるな。そんなに固いのかよ」
    「固いよ。人間の歯は、そんなに強くないんだから」
     何とか噛み砕くと、口の中で転がした。シャキシャキとしたりんごと甘い飴の組み合わせは、思っていた以上に美味しい。ボリボリと音を立てながら、飴を咀嚼した。
     さすがに全部を齧るのは大変だから、包丁を使って切り分ける。一口サイズになったりんご飴を、一欠片ずつ摘まんで口に入れた。
    「これ、美味しいね」
    「そうか? ただの飴がかかったりんごだろ?」
    「そうなんだけど、美味しいんだよ。さすが専門店って感じ」
    「ふーん」
     あっと言う間に、残りの飴はなくなってしまった。夢中になるくらい美味しかったから、なんだか物足りない。これなら、一個くらい余裕で食べられそうだ。
    「ああ、美味しかった。また買って来ようかな」
    「そんなに気に入ったのかよ。変なやつ」
     少し離れたところから、呆れたような声でルチアーノが言う。そんな彼の横顔を眺めながら、僕はりんごの芯を片付けた。
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