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    Ogonsakana

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    Ogonsakana

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    第三者視点の現パロ菊トニです。
    マジで好き勝手に書いてます。菊がヤバめの人になってます。🦉さんがちょっと可哀想なら展開。
    なんでも大丈な方だけよかったら

    第三者視点菊トニこれは怖い話というか、モヤモヤする話。
    数年前勤めてた職場に、K田さんっていう40歳くらいの男性社員がいた。この人すごい仕事ができて、顔も彫りが深くて、ハリウッドスターですって言われても全然信じちゃうくらいの男前。性格も良くて誰にでも優しいってんで女子社員だけじゃなくみんなからすごい好かれてた。こんな完璧な人本当にいるんだってくらい、非の打ち所がない人だった。
    新卒の俺にも優しく仕事教えてくれたし、飲みにも連れてってくれて仕事の愚痴とかもよく聞いてくれた。
    ただこの人、社外でも社内でもすごいモテるのにずっと独身だった。飲み会でそれとなく交際してる人はいるのか?と聞かれても「今はまだな〜」と毎回濁してた。
    バレンタインの日に社内でも1、2を争うくらい美人の女の子に告白されて、「ごめん」と言って断ったこともあったらしい。
    そんな話を聞いて、きっと俺たちのような凡人じゃわからない、イケメン故の悩みを持ってるんだろうと周りと話してた。昔女関係でトラブルがあったとかそんな感じの。
    まぁ本人がそんな感じだったから、周りも特に追及せず普通に接してた。

    そんなある日、K田さんが左手の薬指に指輪をつけて出勤してきた。女子社員がちょっとざわめいてると、K田さんは頬を赤らめて「結婚することになりました」と報告してきた。
    もう周りは騒然。もちろん俺も驚いた。え?今までそんな話一切してませんでしたよね?って。(K田さんを狙ってた一部の女子社員はちょっと泣いてた)
    俺たちはもう大興奮で根掘り葉掘り相手のことを聞いた。どんな人なのかとか、いつ知り合ったのかって。
    なんでも本人曰く、ずっとずっと片思いし続けていてアプローチしていたけど、相手が自分より歳上なことと、身体的障がいを抱えていることを理由に距離を置かれていた。
    けれどその年の誕生日にやっと自分の想いに応えてくれて、交際0日で婚約したと。
    そんなドラマみたいな話と、「これからは俺が守っていきたい」というK田さんの一言で女子社員はキャーキャー言いながらお祝いしてた。
    俺もそんな話本当にあるんだなってその時はぼ〜っと思いながらK田さんをお祝いしてた。
    近々K田さんの結婚お祝い会を開こうという話をして、その日は業務に戻った。

    それから1週間後くらいだったと思う。その日は休日で俺は当時の彼女と大型ショッピングモールに買い物に来てた。彼女がトイレ行ってる間ぼーっと服を見てたらK田さんを見つけた。ちょっと離れてたし後ろ姿しか見えなかったけど、日本人離れした体格をみて、すぐにK田さんだとわかった。よく見ると隣に奥さんと思われる、白杖を持った白髪のお爺さんがいた。
    その時俺はちょっと違和感を覚えた。奥さんが想像してたよりだいぶ歳上だったこともだけど、その2人、異様に距離が近かったんだよね。いや夫婦だから何もおかしいことはないんだけど、なんて言うのかな。K田さんが奥さんに密着してる感じ。腰に手を回して半分抱きついている形で、顔を奥さんの方に向けて耳元でずっと何か喋りかけてた。
    公共の場でそんないちゃつくなよと内心思いながらも一応職場の人だし、彼女からトイレがすごい並んでいて時間がかかるとラインが来てたから挨拶しようと声をかけた。
    「K田さん」と呼びかけて肩に触れると、K田さんはバッとすごい勢いでこっちに振り返った。俺はちょっと驚きながらも「こんにちは」と挨拶したら向こうも笑って「おお!〇〇(俺の名前)奇遇だな!」と、職場と変わらない態度で返してきた。けどこの時もずっと奥さんに密着したまま。
    その時初めて奥さんの顔を見たけど、奥さんもすごい美人だった。60代くらいで、もちろん年相応にシワなんかもあったけど、目が大きくて鼻が通っていて肌も白くて、とにかくすごい綺麗な人だった。
    そりゃこんな男前にアプローチされるわけだと勝手に納得してたら、奥さんをまじまじと見る俺に向かって「ああ、この人俺の奥さん」と紹介してきた。ハッとして俺も自己紹介すると奥さんの方はぺこっと小さく会釈してきた。
    一言も喋らないことに少し違和感を覚えつつも、K田さんに「奥さんすごい綺麗な方ですね」なんて話したのを覚えてる。ただこの間もずーっとK田さんは奥さんに密着してて、奥さんは一言も発さずに真顔で黙ってた。上手く言えないけど、すごく不気味に感じた。
    少し喋って、そろそろ彼女もトイレから出てくるかなと思い2人と別れた。「休みの日もちゃんと栄養あるもん食えよ〜」なんて言うK田さんに笑って、お互い背を向けて歩き出した時だった。
    奥さんがK田さんを振り解いて、すごい勢いでこっちに向かってきた。肩を掴まれて驚いていると、俺にだけ聞こえるような声で「あの人なんでもないんです。私妻なんかじゃないです。結婚なんかしてない」と言ってきた。俺はもうパニックよ。え?は?妻じゃない?は?って。でも奥さんはずっと俺の肩掴んでさ、泣きそうな顔で言うわけ。しまいには「助けてくれ」なんて言われてどうしようと思ってたら、いつのまにか奥さんの後ろにK田さんが立ってた。
    ショッピングモールの、やけに白い天井照明に照らされてさ、逆光でK田さんの顔が見えなくて、この時何故かわからないけど俺はあ、殺されるって思った。
    K田さんは奥さんを俺から引き剥がすと、聞いたことないくらい甘い声で「だめだよAさん(奥さんの名前)困らせたら」と囁いた。腕を奥さんの腰に巻き付けて、また密着して
    「ごめんな。〇〇。奥さんね、人が多いとたまにパニックになっちゃうの。俺がいないとだめなの」
    と俺に笑顔を向けてきた。笑顔なんだけど、目が笑ってない。口だけ不自然に歪んだ、温度を感じない顔だった。
    あまりよく覚えてないけれど、俺は多分「大丈夫ですよ」とか言ってた気がする。奥さんの顔は見れなかった。とにかく怖くて、早くこの場を離れたかった。
    K田さんは俺の答えにうんうん頷いたあと、さっきよりずっと力を込めて奥さんを抱きしめて、そのまま背を向けて2人で歩いて行ってしまった。
    2人が見えなくなると、どっと汗が出てきた。膝が震えて立っていられなくて、その場に座り込んでしまった。その時ちょうどトイレから出てきた彼女がきて、なにがあったの?と聞かれたが、俺は何も答えられなかった。あの張り付いたような笑顔と、奥さんの「あの人なんでもないんです」の声が頭から離れなくて、そのあとはすぐに帰ってしまった。

    次の日、職場でK田さんに会うのがすごく怖かった。昨日の件で何か言われたらどうしようと、気が気じゃなかった。
    そんな俺の不安をよそに、K田さんは今まで通りの態度と笑顔で職場に来ていた。俺の顔を見て「顔色悪いぞ?大丈夫か?」なんて声をかけてきた。聞きたいことが山ほどあったけど、「大丈夫です」と小さく答えて自分のデスクに向かった。

    しばらく経って、K田さんが仕事を辞めることを知った。まだまだ働き盛りの40代、業績だって悪くないのになんでとみんなK田さんを引き留めた。本人曰く「妻の持病が悪化したので、療養も兼ねて俺の地元に引っ越し、自営業を始める」らしかった。それを聞いてみんなは本当に奥さん思いの人なんだなと感心していたが、俺だけは素直にそれを受け止められなかった。
    「あの人なんでもないんです」
    ショッピングモールでの奥さんの言葉と怯えた顔。どう考えてもあれはパニックで出た言葉ではなく、本気だった。本気で俺に助けを求めていた。
    もしかしたら奥さんは無理やり関係を迫られたのかも。それが外部にバレそうになったからここから離れるのか?
    嫌な考えがぐるぐる巡って、通報した方がいいのだろうかとも思った。けど、あの日のK田さんの顔を思い出すと、怖くてできなかった。関わりたくないと言うのが本心だった。

    それからK田さんが辞めるまでの間、おれは極力K田さんを避けて仕事をしていた。
    K田さんもそれに気づいていたのか、あちらから声をかけてくることも無くなった。
    周りからは何かあったのかと心配されたが、別にと答え何事もなかった風を装った。

    そしてK田さんが仕事を辞める前日、2人で飲みに行こうと誘われた。嫌な予感がしたが、どうせ最後だと思いついて行った。
    よく飲み会でも使う居酒屋だった。カウンターに通されて、おしぼりで手を拭きながらK田さんが「この間はごめんな」と切り出してきた。
    K田さんからその話をしてくるとは思ってもなくて、めちゃくちゃ緊張した。
    「俺の奥さんね、不器用な人なの」
    カウンター席で、俺はずっと水の入ったグラスを見ていたから、顔は見れなかったけど、あの時と同じやけに甘ったるい声で話し始めた。
    「俺の一目惚れでさ、ずっと追いかけてたんだけど、あの人不器用だから受け止め方が分からなくてさ」
    この時俺はショッピングモールでの奥さんの顔を思い出して、嫌な汗が止まらなかった。
    「俺からずっと逃げて。だからさぁ、俺が教えなきゃって。俺の元に置いてさ、こんなに愛してるんだぜって、わかってもらわないとだろ?」
    カウンターに置いたK田さんの指の指輪が、やけに光って見えた。
    「だから俺の家に連れてきて、結婚して、やっと慣れてきたかなと思ったらの出来事だったんだよ」
    ドンっと注文していた生ビールが置かれ、ハッとして顔を上げると、K田さんが、あの時奥さんにしてたみたいに顔をぐっと近づけて、
    「だからな、わかるだろ?」
    と囁いてきた。
    そのあとはよく覚えてない。
    走ってその居酒屋から逃げて、気づいたら彼女の家にいた。顔面蒼白できた俺に、彼女は驚きながらも家に入れてくれ、話を聞こうとしてくれたが、K田さんの声を思い出すと震えが止まらなくて何も喋れなかった。

    結局俺もそのあと仕事を辞めた。ショッピングモールのことを思い出すから、彼女とも別れ、別の土地に転勤した。
    K田さんとはあれから一度も会っていない。
    たまに前の職場の同僚から飲みの誘いがくるが、同僚たちの誰もK田さんと連絡をとっていないらしい。誰にも連絡先も、住所も教えず去ってしまったと。

    ニュースなんかを見てて、未だにあの2人を思い出す。
    奥さんは大丈夫なんだろうか。
    K田さんといまだに結婚生活をしているのだろうか。
    あの日俺は、奥さんを信じて通報してやるべきだったのだろうか。
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