12/2「一二三、今日が何日かわかるか?」
首を傾げる俺っちの視線の先で、独歩はこの世の終わりのような声で告げた。数日前に俺っちの奥の奥まで蕩かせる準備のお手伝いをしてくれた指先はピカピカに磨かれていて、壁にかかっているカレンダーに向けられている。
とっくに世の中は電子化だ。なのに弊社ときたらとブツブツ言いながらも得意先に配って回っているらしい彼の所属している企業名が印字されているカレンダーは、それでもちゃんと日毎にスペースが取られているから俺っちはお気に入りだ。キッチンにかけておいて、お互いの予定を書き込むのが密かな楽しみ。そういう日なんじゃね? って時にはハートマークにしちゃったりして。
さてどうしよう。どれだけ覗き込んでも今日がなんの日か思い当たらない。何かの記念日なら職業柄バッチリ把握しているこの俺っちが、だ。
1962