好きが染み込んでいく俺が「高野さんが好き」と口にする度に嬉しそうな顔をして見つめてくるからいつも恥ずかしくてたまらない。でもその笑顔を見たいと思う自分もいて結局何度も同じ言葉を口にしてしまうのだけれど。
「あの…ちょっと恥ずかしくなってきたので休憩挟ませてください………」
想いを伝えた後の高野さんの甘やかし方は尋常じゃない。さっきもいきなり抱き締めてきたかと思ったら、耳元で好きだと囁き続けてきて。何度止めても言ってと言ってくるものだからついに根負けしてしまった。
「いいけど、休憩ってあとどれくらい?」
「えっと……十分!十分だけ下さい!」
「なにそれ可愛い。じゃあ十分間キスさせて」
「キスしてたら休憩にならないでしょーがッ!!高野さん軽いのじゃ済まないでしょ絶対!!」
「だって好きな奴が目の前にいるのに我慢出来るのでわけねーだろ」
そう言いながら今度はおでこに唇を寄せてくる。
(だからそういうところが反則なんだってば!!)
そんなことを思っているうちにどんどん顔中にキスを落とされて結局休憩は三十分に延長された。
「ずるい……です……」
「なんのこと?」
ようやく解放された俺はベッドの上に倒れ込んだまま文句を言う。
「絆される俺が言うのも何ですけど…高野さんも大概ズルいと思います……」
高野さんは自分がどんな顔で言っているのか分かっているんだろうか。
幸せで仕方ない顔で笑っていることに気付いていないんじゃないだろうか。
きっとこんな表情を見せるのは自分だけだという確信がある。それがどうしようもなく嬉しいなんて口が裂けても言えないけれど。
「お前が可愛い過ぎるからだろ」
「またそうやって人のせいにして……。だいたい可愛くなんか無いです。高野さんが一番知ってるでしょ。俺が今までどれだけ突っぱねた態度とってきたか」
高野さんへの気持ちに気付いた後もずっと意地を張ってきたのだ。
なのにこの人はそんな俺を受け入れてくれたばかりかこうして求めてくれるようになった。
本当はすごく幸せなことなのだということは充分理解しているつもりだけど、それでもつい憎まれ口を叩いてしまうのはもはや癖のようなものだった。
「まぁ確かに。最初の頃は本当に大変だったしなかなか手強い相手だったな」
「うっ……すみません……」
「でも今は違うだろ?」
「今はちゃんと、好き……ですよ……」
自分で言おうとしておいて思わず語尾が小さくなった。
だってやっぱり恥ずかしいし!こういう台詞は慣れないし!そもそも俺のキャラじゃないし!! しかし高野さんにはしっかり聞こえていたようで、満足気に微笑むとぎゅっと抱き締められた。
「律…好き。すげー好き」
「~~~~っ!!!」
耳元で低く甘く囁かれた声は鼓膜から全身に響き渡っていくような感覚になる。
(本当に、高野さんの気持ちが体の中に染み込んで広がって…俺の細胞全部…高野さんのものになったみたい……)
そしてそれは同時に自分の心も高野さんに染められているということと同義である気がした。
「あーもう、ホント可愛いなお前」
額に、瞼に、優しい口付けが降ってきて擽ったさに思わず身動ぎする。これ以上甘やかされたら本当に全身が高野さんに溶かされてしまうんじゃないかと思った。