業とぬい【おでん屋軍師との出会い編】 フィンブルの冬に来て随分経った。
この世界はあらゆる事象に対して超常の力が働いているようで、一般常識では測れないような怪奇現象も日常茶飯事だ。
事ある毎に驚いていたら身が持たないと悟った俺は理解不能な事象は全て「ここはフィンブルの冬だからしょうがない」と割り切るようにしている。
(いちいち考えるのもいい加減疲れてきたからな。それに、この世界も……)
この世界も悪いことばかりではない。
フィンブルの冬で出会った小さな命……自我を持ったぬいぐるみ『ベビ帝』のおかげで俺は人の心を取り戻すことができた。
ベビ帝の存在はフィンブルの冬において理解できない事象の最もたる例だが、俺に寄り添ってくれるその命のおかげで、俺の心は救われている。
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