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    ao4_so

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    ao4_so

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    DD2のおぼじゃとメポがキャンプで添い寝する話。
    時期的には加護なき世界になる前くらいの話です。
    カプ要素と俺設定が含まれるぞ。
    なお、サブポーンのミラベルとキーンは架空のモブ。

    ##おぼメポ

    おぼじゃとメポ添い寝回「ツイていませんね」
    突然の大雨に見舞わられ、
    身長2mを超す獣人女性型ポーンがぼやく。
    「本当ですね。まあ、でも近くに野営地跡があってよかったと思いますよ。ひとまず雨はある程度凌げますからね」
    とエルフ男性型のポーン。
    「手が止まっていますよ。早くテントを設営しないと」
    とモノクルをつけた人間男性型のポーンがテントの骨組みを立てながら嗜めると、獣人型とエルフ型のポーン二人は顔を上げ、それから離れた場所で俯いて座っている覚者を見た。廃屋の屋根で雨を凌いではいるが大雨では完全とは行かず、ずぶ濡れであった。
    「元気が無さそうですね」
    「裸みたいな防具を着ているから寒いに決まってますよ」
    「別に好きで着てる訳じゃないそうですよ。シートを張りますから、そっちを持ってもらえますか」
    裸みたいな防具──シャルマンビスチェ──を趣味か何かの理由で着用する事があるのだろうか? とポーン二人は思ったが、人間型ポーンにちくちくした声色で言われそうなので「了解です」とだけ言ってシートを張り、そして固定をし終えて一先ず完成した。
    きちんと設営できているか確認した後に人間型ポーンは立ち上がり、
    「ミラベルとキーンは先にもう一つテントを設営してください。私は覚者様を呼んできますから。私も後で手伝います」
    と指示を出すと覚者の元に向かった。二人の距離が二メートル程になったところで覚者は顔を上げ、ポーンの顔を見た。ポーンの顎のあたりの長さで切り揃えられた髪はずぶ濡れになって頬に張り付いている。
    「お待たせしました。テントの準備が出来ましたのでお休みください。ボロボロの屋根よりは雨を凌げると思います」
    「ありがとう……」
    ゆっくり立ち上がると大雨の中をトボトボと歩き、そしてテントの中に入り、人間型ポーンはそれを確認するとテントの設営に加わった。
    覚者たちは座り込むと、屋根の下で隣でテントを設営しているポーン達をぼんやりと眺める。
    獣人型ポーンがぶるる、と身を震わせて水飛沫が人間型ポーンとエルフ型ポーンに掛かる。
    「わっぷ、ミラベル! ちょっと……至近距離で身震いしないでくださいよ!」
    「ああ。すみません、キーン。お詫びにさっき収穫したクランベリーをあげますよ」
    ミラベルと呼ばれた獣人型ポーンが腰に下げたの袋の中にはエルフ型ポーン•キーンの拳くらいの量クランベリーが入っていた。ミラベルはそこからつまみ取って、男性陣の手のひらに載せる。
    「えっ、一粒だけ? お詫びってこう……もう少しもらえませんか?」
    「二人とも元気ですね」
    呆れているのか興味が無いのかよくわからない声色で人間型ポーンが口をモゴモゴさせながら言う。……すぐにクランベリーを食べたようだ。
    そしてそれから少ししてテントがもう一つ設営出来た。
    二つのテントの内、覚者と人間型ポーンが、もう一つはミラベルとキーンが入る。
    二人は「身震いはテントの外で」だの「その長い髪を絞るのも外でしては」だのと言い合いながらずぶ濡れになった防具を脱いでいる。
    ちなみに補足しておくが、彼らは別に仲は悪く無いようだ。
    もう一つのテントでは人間型ポーンは軽装姿になり、タオルで顔や体を拭き、ずぶ濡れになったローブを搾り、タオルで顔や体を拭いた後に覚者の隣に座った。
    「寒くは無いですか」
    「寒い」
    「ではどうぞ」
    と片腕を軽く挙げると覚者は「どうも」と言って彼にくっついて座った。
    人間型ポーンも数十分雨の下でテントを設営していた為に体の表面は冷たくなっていたが、身を寄せ合っていると少しずつ暖かくなってきた。
    「悪いね。ホタルも寒いだろうに」
    「これくらいはなんともありません。それに私は覚者様の専従ポーンですし、お気になさらず」
    人間型ポーン──ホタルは務めて優しい声色でそう言った。
    「……ん。覚者様、額を触ってもいいですか?」
    「どうぞ」
    「失礼します」
    と大きな手のひらが覚者の額に当てられる。ちょっと冷たくて気持ちいい。
    「ふむ、やはり少し熱っぽいですね。酷くならない内に薬を飲んで休むと良いですよ」
    リュックの中を漁り、ポーチから薬を取り出すと水筒と共に覚者に差し出す。
    「ありがとう。もう少し雨足が弱ったらスープ作るかな……」
    覚者に話し掛ければ会話はするものの、普段よりも口数が少ない、とホタルは思った。おそらく冷えで消耗しているのだろう。
    覚者は毛布を被り、ホタルが寝そべると彼の体にしがみついた。
    「おやすみ」
    「おやすみなさい、覚者様」
    覚者は目を閉じたが、ホタルはまだ起きているつもりのようで声量を押さえてサブポーン達と話している。
    「ホタル、キーン。覚者様しりとりしませんか?」
    ミラベルが突然言い出す。
    「覚者様しりとり? なんですかそれは」
    「今までに雇われた覚者様のお名前でしりとりをするんです。私から行きますよ。ベンジャミン様! はい、次はキーンの番です」
    「いや、もう終わってますけど…………」
    「違います。『ベンジャミンさま』なので『ま』です」
    「そんなルール、終わらないじゃないですか」
    「『ま』のつく覚者様達に雇われていればいるほど有利になりますね」
    「『まあなんと素晴らしいエリック様』。はい、次はホタルです。『ま』ですよ」
    「そこまで来たらこれはもうしりとりではなくなるのでは?」
    三人のポーン達の会話が弾んで(?)いる。
    あまりにも内容が無さすぎる会話ではあったが、それでも誰かが近くにいるという安心感は一応得られる。覚者はホタルの体に身を寄せつつ眠りに落ちた。

    ***
    ホタルは覚者が寝ている事に気が付いた。
    自分の身体に顔を押し付けている為に寝顔はよく見えない。じっと眺めていると、ミラベルとキーンも覚者が眠った事に気付いた様だ。
    「声を落とした方がいいですかね?」
    「この土砂降りですよ。これ以上小声だと私たちが話せなくなりますし、今のままでも問題ないでしょう。それよりも……」
    ミラベルはそう言って空を見上げる。
    分厚い雨雲が空をのっぺりと覆い、目に見えて大きな雨粒が振り続ける。
    「勝手に料理をしてもいいものでしょうか。雨が弱まってきたら暖かいものが食べたいかも」
    ホタルとキーンも空を見上げる。
    「各自持たされている消耗品は好きに使っていいとのことなので干し肉でスープでも作りますか」
    「いいですね。干しキノコや芋もありますし入れましょう」
    「それも雨が弱まってからですね……」
    三人とも無表情のまま空を見上げていたが、ミラベルは視線を覚者に向けた。
    「そういえば、先程から気になっていたのですが」
    「はい、なんでしょう」
    「覚者様とホタルはそういう仲なのですか?」
    「……そういう、とは?」
    「性交です」
    「…………」
    「…………」
    キーンはミラベルを凝視した。ホタルは一瞬言葉を失っていたが、我に返ると
    「そういう仲ではありません。私と覚者様は極めて清い関係です」
    と言った。
    「いや、清い関係は添い寝をして笑いながら覚者様を眺めないでしょう。キーンもそう思いますよね」
    「さあ……」
    「清いです」
    「ああ、でも、そういえば私も噂に聞いたことがあります。己の専従ポーンで性欲処理を行う覚者様もいると」
    キーンも続いた。
    「清い、です」
    ホタルは念を押した。
    「性欲処理のお手伝いは?」
    「した事はありません。全く、そういう事を訊ねるのはどうかと思いますよ。ミラベルも聞かれたら困るんじゃありませんか」
    ホタルはキッパリと言うと、なぜか喰らい付いてくるミラベルに反論した」
    「私はそういった事は全く。私のマスターは『大事な人』を自宅に沢山連れ込むタイプの方なので気が済んでいるのでしょう」
    「…………。そうですか」
    ホタルはしばし次の言葉を迷い、
    「あなたのマスターには、他のポーンにそう言った話をしていた事は内緒にしていた方がいいですよ」
    と言った。
    「すみません。清い関係であればくっつかないと思うんですよね。人間は同性や低年齢を連想させる姿の相手には警戒心が緩くなったり、スキンシップを取りたくなる傾向であると聞きますが、ホタルはどう見ても成体の男性型ですし」
    キーンまで追撃してきた。ホタルは若干眉をハの字にした。これはもう言ってしまった方が早くこの話題が終わるのではないか。そうと思った。
    「覚者様は最初はこうではありませんでしたよ。冷え込む夜でも私との間にリュックを置いていましたし」
    「まあ」
    「それがこんなに」
    とミラベルとキーンは覚者を見た。覚者はホタルの腰の辺りに抱きついている。
    「これは……距離感をとっていた覚者様がどうしてこんなにくっ付いているのかを説明する必要がありますよ、ホタル」
    「ミラベルの意見に同意してはいけない様な気がしますが、同意します。聞かないままであれば私はこの先、夜しか寝られなくなりますよ」
    「…………」
    ホタルは溜息を吐いた。
    「それは……あれですよ。冷え込む夜だったんです。あの時は簡素なテントしかなかったので寒さを凌ぐには心細く、覚者様も凍えている様だったので見かねて提案したんです。『ポーンにも体温がありますので、私で暖をとりますか』と」
    「まあ!」
    ミラベルは声を上げた。土砂降りの中でもよく通る声であった。
    「それで? 覚者様は?」
    「覚者様は渋い顔をされました。『男にくっつくのはちょっと』と。それに対して女性型のポーンが提案しました。『私にくっつきますか?』。覚者様は少し迷われたものの、『君は今日雇ったばかりだしなんか悪い気がする』と返して薄手の毛布にくるまっていました。焚き火に当たっていても寒そうだったので私は尋ねました。『私が男性型である事が問題ということは、性的なものが問題であるという事でしょうか? 説明していただければ助かります』と」
    「ふむ……」
    「話し合わなければ分かりませんからね」
    頷くミラベルとキーン。
    「そうすると覚者様は歯切れ悪く『そうだ』と仰いました。そこまでわかれば私も疑問点がなくなります。『安心してください、覚者様。ポーンに性欲はありません』と言うと覚者様は怪訝な表情をされました。『酒場では酔う事で理性が働かなくなった人間が他者の体に触れ、トラブルを起こす事が多々ありましたが、ポーンはそういった心配は有りません。例えば、起きるまでじっとしていろと命令されるのであれば起きるまでじっとしています』と説明をすると、覚者様は迷っている様でした」
    「すぐには決断されなかったのですね」
    とミラベル。
    「はい。『今まででホタルがそういうんじゃないのはなんとなくわかってるけどやっぱり抵抗感がある、信頼していない訳では無い。信頼していなかったら、野営をするときに寝ずの番をさせたりしない』と言いました。おそらく私を気遣って補足されたのでしょうね。余談ですが、この時初めて“信頼している”と明確に告げられ、とても嬉しく思ったことを覚えています」
    ホタルは地面に落ちて飛び散っていく雨を眺めながら話を続ける。
    「そして覚者様は右手を差し出しました。『じゃあ、手だけ……』手なら握っても良いのだと判断した私は自分の両手を擦り合わせ、覚者様の手をとりました。体格差があるので当然ですが、冷たいと思う前に、まず先に“小さな手だ”と思いました。この小さな手で大型の魔物にしがみつき、短剣を振るい、目玉を抉り抜いているのだ……そう思いました。少しだけ感慨深い気持ちでいると、『ホタルの手、あったかいね』と感想を頂いたので『ポーンにも体温はあります』と言うと、『知ってる』と返事がありました。その日は覚者様がもう大丈夫、と仰るまで手を繋ぎました。恐らく、それをきっかけに徐々に触れる時間が伸びたり、接触箇所が増えたりする内に一月後程には添い寝をするようになりました」
    「肝心な所を省略しないでください」
    ミラベルに文句を言われ、ホタルは返事をする。
    「本当に徐々にという感じだったので省略した訳ではないのですが」
    「まあ、信頼していただけるというのは良いことですね。私は私のマスターとどうもぎこちなくって」
    「ほう、ぎこちない。何かあるのですか?」
    ミラベルの興味はキーンに向かったらしい。ホタルはホッとして起こしていた上半身をシートの上に横たえた。
    相変わらず強い雨がテントを叩く。横になったまま雨音を聞きつつぼんやりと視線を彷徨わせていると、覚者が目を覚ましている事に気付いた。
    「何話してんの」
    体調が優れないのもあるだろうが、若干怒っている様でぶっきらぼうに言った。
    「いつからお目覚めになっていたんですか?」
    「なんとなく話してるのは聞こえてたけど、はっきりと耳に入って来たのは“信頼してる”とかどうのこうのって」
    「すみません、皆がしつこくて話した方が早いかと判断しました」
    と言うと覚者は溜息を吐いた。
    「まあ、いいか……」
    覚者は視線を落としたが、特に何かを見ている訳では無さそうでぼんやりとしているようだった。
    「……覚者様。一つ聞いても良いですか?」
    とホタルが尋ねると、ぼんやりした視線のままホタルの方を見た。
    「どうして初めの頃は私に触れる事を避けていたのですか?覚者様の様子を見るに、特に男性が苦手という訳では無いと思うのですが。やはり私に何か至らない点があったのでしょうか」
    そう聞かれ、覚者は視線を彷徨わせた。
    「ヘッ」とか「ハッ」とか例え様のない声を時折漏らしている。
    「か、顔が……」
    「顔が?」
    追撃をすると、顔色の悪かった覚者の頬が赤くなり始めた。熱が上がったのかとホタルは心配したが、そうではなかった。
    「んー、あ〜……。なんていうか、顔が好みで、ちょっと……」
    「顔が好み」
    きょとんとしてオウム返しをすると覚者はまた「ヘッ」と言った。ホタルは後に知る事になるのだが、これは覚者が恥ずかし過ぎて耐えられない時にやる癖であった。
    「顔が好みだと触れられる事に抵抗感がある、と? 人間はそういうものなのですか?」
    「他の人は知らないけど、私はそうだよ……」
    ホタルは寝そべったまま口元に手を当てた。
    「なるほど。となると、今は私の顔が好みではなくなったと」
    「ち、ちがう。慣れだよ慣れ。信頼」
    「なるほど、そうですか」
    信頼。ホタルは嬉しい気持ちになって思わず頬が緩んだ。覚者はそんなホタルの緩んだ表情を少しだけ眺め、「ふん」と言ってさっきよりも強く彼の体にしがみついた。ホタルからは覚者の顔が見えなくなる。
    「もうちょい寝る。ホタル達も寝てもいいけど交代で寝ずの番して。雨が弱まったら夜中でも構わないから起こして。なんか作るから」
    「承知しました」
    覚者からの命令を受けてホタルはミラベルとキーンにも伝え、まずは一番眠くなさそうなミラベルからという事になった。
    「早く肉のスープを食べたいですね。覚者様の味付けはちょっと香辛料が効いているから辛いですけど。雨が止むおまじないをしてみようかな?」
    と言うミラベルの大きな独り言を聞きながら、自分にくっついている覚者を起こさない様にホタルは目を閉じた。覚者の体温が心地よい。
    この雨が止んだのはだいぶ遅い時間になってからだった。
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