爪切りのお話 パチン、パチンと軽くて硬い音が、あっちゃんを寝かしつけて兄達の元に戻ってきた俺を出迎える。
音の正体は爪切りだ。
『ビキニ御殿』ことミカ兄の自宅のリビングに置かれた、大の男が三人並んで座ってもまだ余裕のある大きなソファに座って、つけっぱなしのテレビから流れる下世話なノリの深夜バラエティ番組をBGMに、ニヤついた表情のケン兄の手を取って何とも微妙な表情をしたミカ兄が丁寧に爪を切ってやっていた。
「……何?爪切ってもらってんの?」
「おう。伸びてきてたからな」
「それぐらい自分で切れよ」
「俺がやるとガタガタになるからなぁ。その点コイツは綺麗にしてくれるし」
「なー?」っとミカ兄に笑いかけるケン兄の顔はやに下がっていて、ロクでもない事を考えているのが丸わかりのスケベ面だ。
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