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    で@Z977

    @deatz977

    グスマヴェちゃんだけをまとめておく倉庫。
    🦆🐺至上主義強火。独自解釈多。閲覧注意。
    (全面的に自分用なので配慮に欠けています)

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    で@Z977

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    最高にちょうどいい身長差
    マはグスにとって全てがぴったり丁度いい存在。

    最高にちょうどいい身長差 硬さのあるブルネットが手のひらを優しく刺すツンツンした感触が心地好くて、リズミカルに撫でたり指を絡めたりして遊ぶ。目線を下げた先にある小さな頭のてっぺんで旋毛が髪の流れを作っている。短く切り揃えられた髪の毛は毎朝セットされているはずなのにいつの間にか気まぐれに飛び交っていて、少年の雰囲気が抜けきらない男に一層の幼さを与えていた。

    「グース?」
     ふいに声をかけられて掌の中の頭が上向いた。緑豊かな惑星のように煌めいて上目遣いにまっすぐこちらを捉える大きな瞳も、子供みたいな容貌を際立たせている。眉根を寄せて不安だか困惑だかを浮かべた色に、「どうした?」と返す。
    「いや、グースこそ、さっきから、頭……」
     撫でてるから、と次第に尻すぼみになる言葉はどうにか最後まで聞き届けることができた。
     きらきらと色を変える虹彩の美しさに囚われていると、ばつが悪そうに視線が彷徨って逃げられた。掠れていく声とは裏腹に、紅く染まる頬はいやに鮮やかだ。
    「あぁ、悪い。なんか、丁度いいところにあって」
    「おれが小さいって言いたいのかよ」
    「そうは言ってないだろ」
     いたいけな子供みたいに頬を膨らますことさえ無意識の仕草なのだから、どうしたってこの男を愛らしく感じてしまうのは不可抗力だった。ベビースキーマというらしい。いや、それは容姿に対する言葉だった気がする。要するに、赤ちゃんみたいな姿形を見ると、人間はそれを守りたいとか、愛おしいとか感じてしまう生き物なのだ。遺伝子レベルでそのように設計されているのだから、仕方がない。何が仕方がないのかわからないけれど。あぁ、俺が、この男を愛しく思うことは、DNAに刻まれた、逃れられない宿命、ということなのか。いや、そんなことがあってたまるか。そんなくだらない理由で、マーヴェリックを可愛いと思っているわけじゃない。
    「なんか、丁度いいんだよなぁ」
     どうにも撫でることをやめられずにぽすぽすと手を動かす。掌に馴染む頭の丸さも、丁度いい。
    「丁度いいって……」
     口の中でもごもごと続く言葉を明瞭な意味に捉えることは今度こそ叶わなかった。唇を尖らせて、拗ねています、なんて態を作っているけれど、朱色に染まった目尻と熱で光る瞳に甘えを見つけたので気にしないことにする。拗ねているというより、照れているだけみたいだ。

     定位置のように傍らにいるマーヴェリックのすべてが、俺にとって丁度よかった。少し幼さの残る伸びやかな声が様々な音色を鼓膜に届けてくれるのも丁度いい。コロコロと変わる表情も、爽やかな整髪料に交じる甘くやわらかい匂いも、子供みたいな体温も、全部丁度いい。
     俺より頭半分、よりもっと小さい身長は、思いの外しっかりと鍛えられた筋肉によってしなやかに纏われていて抱き締めるのにも丁度いい。腕に馴染む感触を思い出す。もう何度抱擁を交わしたかわからない。最初こそスキンシップに不慣れなマーヴェリックはおっかなびっくりの様子で戸惑っていたものの、最近ではハグを心待ちにしているようにすら見える。小柄な体を抱きしめたときに背中に回される腕の力加減も、近頃は遠慮がない。ぎゅう、と抱き締め返してくる強さまで丁度いい。
    「お前の身長って、」
     続けようとした言葉を一度脳内で反芻して、やめた。片眉を上げて訝しがる視線にどう続けるかと逡巡する。

     マーヴェリックの身長は、キャロルと同じくらいに思えた。ともすればヒールを履いたキャロルより、少しばかり低いのかもしれない。
     これくらいの身長差ってキスがしやすいんだよな、と思ったのだ。口をついて出そうになった言葉を飲み込んだのは、その発言がまるで不誠実なもののような気がしたからだ。誰に対して不誠実なのかはわからない。そもそも、不誠実な意味を持つほど、この男とその行為をすることを真剣に考えていたのだったか。

     おれの身長が何だよ、とつまらなさそうな口振りで言葉を溢してマーヴェリックが俯いた。声の響きが湿っているような気がして、傷つけてしまったのではないかと不安が過る。マーヴェリックが己の体格を気にしていることは重々承知していた。揶揄うつもりはなかった。ただ、キスがしたかっただけで。

     あぁ、そうか。俺は、この男に、キスがしたかったのか。
     それでずっと頭を撫でていたのかもしれない。タイミングを窺うみたいに。

     マーヴェリックが俺と話をするときには、自然と顔を上げて上目遣いになる。かたちの良い唇が開いたり閉じたりするたびに紅い舌が覗いて、少しばかり腰を落とせば簡単にこの男の唇を奪うことが出来るのだった。チラチラと誘いをかけて咥内を蠢いている真っ赤にぬめる生物に噛みついてやりたい。

    「マーヴ、」
     後頭部を支えていた手のひらを滑らせて顔を撫でる。やわらかな頬がしっとりと吸い付く。それでも顔を上げてくれない男に、もう一度コールサインを口にして、今度は下顎を掴んで有無を言わさずに上向かせた。眉間に皺を寄せているマーヴェリックは、きっとまだ身長の話にこだわっていて、ネガティブな思考が渦巻いているのかもしれない。
     違うんだマーヴェリック。お前の小柄さは何もマイナスなことではなくて、むしろ、俺にとっては――。

     顔を近づけると同時にマーヴェリックがぎゅっと目を瞑った。長く豊かな睫毛が期待に震えている。親指の腹で触れた唇が控えめに開き、熱のこもった吐息が漏れるのを許した。

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