人間洋×人狼三水戸はバイクを走らせていた。道路照明灯が点々と並んだ海岸と山の間を分けるように引かれた道路には水戸以外が通る気配はない。今日はイレギュラーな形で残業する羽目になってしまいとっくに人が出歩くような時間ではなかった。明日は休みだし早く帰ろうと思うと自然にバイクのスピードが上がっていく。エンジン音と風がジャケットの撫でる音が重なる。チャックは全て閉めているしズボンは体に沿ったのもだがどこからか風が入って寒かった。
(あー早く帰って寝たい)
意識が夕飯を食べるか食べないかで揺れている時、ハイビームで照らされた数十メートル先を何かが横切ろうと飛び出してきた。それは山側の木々の中から道路に降りてきたであろう動物だった。
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