パトリツィオ背景推理両親は銀行業でそれなりの業績、そして地位があった。母親が中々子供を孕めず、やっとの事で授かった第一子。美しく気高く、それでいて人形のように無表情の男の子。両親は、彼―パトリツィオの笑顔を見た事がない。音楽に芸術に、学問に、人の刺激になりうる全てを体験させたとしても、表情1つ見せず、興味もなく本当に人形の様にどこかに佇んでいる毎日。日に日に精神が参って行ったが、美しい神からの贈り物を手放す理由にはなりえなかった。
パトリツィオが10歳の時、使用人が彼の部屋に、花瓶に一輪の花瓶を添えた。真紅に染った、棘の取られていない一輪の薔薇。それを目にした瞬間、使用人の目も気にせず、彼は吸い寄せられる様に、食い入るようにその薔薇を見た。
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