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    sakurattihikari

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    sakurattihikari

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    くりすとの第一回解釈戦争
    我らの女王勝手にお借りしてるし宝石箱内装は妄想だしわけわからんの進歩

    某日

    ステラの旅路のうちに出会った宝石人の一部は、彼の仲間である琥珀が管理する、この宝石箱と呼ばれる領内に留まっていた。
    一見あまり大きくはない箱であるが、実際に内部に足を踏み入れるとそれなりの広さがあるそこで、各々が気の向くように過ごしている。クラーショックの有するロシアの塔から一時的に足を運んでいたスモーキークォーツもまた、この空間に世話になっていた。

    スモーキークォーツが居座る場所は大体決まっているため、他人との交流が少なく、それ故にあまり面識の多くない彼の所在を特定することはそれほど難しくなく可能であった。
    この日スモーキークォーツは、区内の建物内部、その中の廊下に設置された2つの一人用ソファと、そのソファの間にひとつ低めのガラステーブルが配置された、道端の休憩席にいた。ギリギリ日向と影の境が見られる時間帯で、数刻前まで窓ガラス越しに日が当たっていたであろう位置のソファに、彼は煙草をふかしてこの空間を独占している。

    「…………」

    ソファに浅く腰掛け、脚を組んで背を落ち着けるスモーキークォーツの後方から、物言わぬ女王が視線を向けていた。

    「……用事は済んだんだ。私がここに長居する必要はもうない。……何かしたいのなら、今のうちに行って来い。明日にはここを出る。」

    声を持たぬ人形である彼の女王の駒は、静かに首を振った。スモーキークォーツはそちらに視線をやりはしなかったが、自身の欠片を組み上げた駒の意思は、彼に伝わったのだろう。スモーキークォーツも何も言わなかったが、まだいくらか吸える部分の残った煙草をゆるく咥え、息を吸い込み、それをゆったりとした呼吸に乗せて吐き出した。
    しかしその静寂の中に、一人の宝石人の踵の音が、スモーキークォーツの耳に届いた。来客であるらしい。規則正しく丁寧で穏やかな足取りを感じさせる、踵が床を叩く音が、段々とこちら側に近づいてくる。スモーキークォーツは右手指に軽い力加減で挟んでいた煙草の残りを灰皿に押し付けると、面倒ごとの可能性を避けるためにその場を立ち去ろうとする。
    けれど、それは来訪者の声によって静止された。

    「こんにちは、スモーキークォーツさん。どちらかへ向かわれるのですか?」
    「……ごきげんよう、女王陛下。私はただ、空気を吸いに外へ向かおうというだけですよ。」

    声をかけられて、場を脱するタイミングを逃したスモーキークォーツは、挨拶のために立ち上がって来訪者に向き直り、恭しく頭を下げるのだった。

    「まぁ、ご丁寧に。ですが、どうぞお顔を上げてください、貴方も王なのでございましょう?その意味では私たちは対等なのですから、そんな改まった態度は必要ありませんよ。」
    「私が王ですって?まさか、成り損ないの真似事ですよ。」

    促されてスモーキークォーツは顔をあげる。
    来訪者は氷城の主にして女王の冠を得る宝石人、オパールであった。しかしこれまで、二人に直接対話の機会があったかと言われれば、そういうわけではない。
    スモーキークォーツが口を開く前に、女王は話し始めた。

    「私の城の騎士に、貴方のことを知っている者がいるのです。貴方の王についての話はそちらから伺いました。なんでも、チェスの駒を召喚物として扱うんだそうですね。」
    「…貴女が仰る騎士というものが、私の脳内に浮かべられる者を指すのであれば、私はその騎士から貴女についてを伺いましたよ。」
    「彼はお喋りですからね。」
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