某日
ステラの旅路のうちに出会った宝石人の一部は、彼の仲間である琥珀が管理する、この宝石箱と呼ばれる領内に留まっていた。
一見あまり大きくはない箱であるが、実際に内部に足を踏み入れるとそれなりの広さがあるそこで、各々が気の向くように過ごしている。クラーショックの有するロシアの塔から一時的に足を運んでいたスモーキークォーツもまた、この空間に世話になっていた。
スモーキークォーツが居座る場所は大体決まっているため、他人との交流が少なく、それ故にあまり面識の多くない彼の所在を特定することはそれほど難しくなく可能であった。
この日スモーキークォーツは、区内の建物内部、その中の廊下に設置された2つの一人用ソファと、そのソファの間にひとつ低めのガラステーブルが配置された、道端の休憩席にいた。ギリギリ日向と影の境が見られる時間帯で、数刻前まで窓ガラス越しに日が当たっていたであろう位置のソファに、彼は煙草をふかしてこの空間を独占している。
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