殺意ある系害悪ハンターのトニオによるヴァイ墓青白く輝く月の光を受けて、降り積もる雪が寂れた工場を薄ぼんやりと照らしている。
ひび割れた壁、錆びた手摺、もう動く事もなく佇むだけの機械達。
レオの思い出と称されるこの場所は、いつ何時訪れても寒々しく、物悲しい。
止むことのない雪以外に動くものはなく、ただあるのは耳が痛くなるほどの静寂。だがそんな静けさの中でアントニオが見下ろす先に唯一、微かな音をたてるものがある。僅かに上下する動きに合わせて聞こえる、隙間風のようなひゅうひゅうという音。それは人の形をしたもの──今回のゲームの参加者である、アンドルー・クレスから発されるか細い呼吸音だった。
「嗚呼。気の毒なことだな、墓守よ。せめて走った先に地下室があれば、先に脱落した者達にも報いることが出来ただろうに」
5207