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    シロヨシ

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    シロヨシ

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    ほのぼの天国編①、②//////////



    神様がいました

    神様は天使を造りました

    その後人間を造りました


    //////////


    「ねえ貴方ご覧になった?」
    「いいえ。一体どんな生き物なのでしょう?」
    「聞いたところ我々と違い翼を持たないそうです」
    「しかし神様がおつくりになったのですから、きっと素晴らしいものでしょう」

    フォルネウスは半ば意識を宙に飛ばしながらそんな会話を聞いていた。
    神の偉大なる御業である天地創造が一段落してこの方、天使たちの話題の的はそれだった。

    「にんげん」

    神が新たに創造した、神の姿に似せたいきもの。
    生まれたばかりのそれはエデンと呼ばれる園で暮らしているそうだが、姿を見た天使は少ない。
    座天使として神に仕えるフォルネウスもまたそんな天使の一人だった。
    他の天使達からのんびりしていると言われがちなフォルネウスは、だから、ぼうっとしながら考えた。

    (どうして神は、私たちの後ににんげんをお造りになったのでしょう)
    と。



    //////////



    「君はルシフェル様のお話を聞いたか? まだなら是非拝聴すべきだ。あの方は我々の行く末について真剣にお考えなのだから」
    「私はあまり賛同できません。神がお許しになっているから良い物の、あれでは冒涜の誹りを受けるのも免れないでしょう」

    そんな話を遠くで聞きながら、フォルネウスはエデンの園のほど近く、美しく清澄な泉で体を清めていた。強いてそこである必要は無かったが、もしかしたら人間についての話が少しでも耳に入るかもしれない、そう思ったのだ。
    だが、天使たちは以前ほどは人間について囁きあってはいなかった。目下注目の的になっているのはある偉大な天使の名だった。
    彼はあまりにも偉大だった。強く賢く美しかった。フォルネウスもその姿を思い出して、それから泉に浸る細く生白い自らの身と比べて、少し嘆息した程だった。
    だが彼は偉大過ぎた。本来"最も"偉大であるべき方よりもそうなのかもしれないと囁かれていた。いや、耳聡い者なら知っていた。そう嘯いていた。彼自らが。

    皆動揺していた。
    ある者は彼に心酔し、またある者は彼を非難したが、つまり天使たちは皆一様に戸惑い動揺しているのだ。フォルネウスにはそう見えた。

    「貴方はどうお考えですか」

    ある天使が、ぼうっと水に浸かるフォルネウスを呼んだ。かすかに刺々しさを含んだ強い口調だった。フォルネウスはそれに気付いているのかいないのか、ゆっくりと顔にかかる髪を掻き上げながら答えた。

    「何についてですか?」

    天使は、ため息をぐっと飲み込んだ。

    「……ルシフェル様のお言葉についてです。天使は立つべしと。我らは尊き方に作られたが故に卑しとするのは誤りであると、我らは──」

    天使の言葉はだんだんと熱を増し、その口は滑らかになっていった。堰を切って怒涛と溢れた。その言葉はフォルネウスに聞かせているつもりで、誰にも向いていなかった。自分を除く全てに向いているようだ、フォルネウスはそう思った。

    「つまりあのような愚かな生き物を生み出し我らを脅かす我らが主に是非を問うべきなのだ!君もそうは思わないのか!」

    もはや叫びだった。泉にいた他の天使たちもこちらを伺っていた。
    いい加減体が冷えてきたので、フォルネウスは泉から上がった。解けていた装束がひとりでに身にまとわりついて、いつもの座天使フォルネウスに戻っていた。

    「…わかりません」

    「なん…」

    天使は嘲りと怒りが半分ずつ混ざった顔で言葉を詰まらせた。

    「座天使たる方がそのような有様で示しが付かぬとはお思いでないか」

    「わかりません。私を示すものは主の定めし名と位階のみですから、主がお示しになられることでしょう」

    「そのように被造物たらんと自ら欲すのは寧ろ怠惰ではないのか。大いなる霊より生み出されし存在である我らが自らの意志を放棄するとは」

    「わかりません。貴方のそれらの言葉はさる方の述べた所の写しでしょう。貴方と私とがそれ程異なるとは、思いませんが」

    何か反論しようとした天使の顔が燃える火のように真っ赤になったのを見て、俄に周りで伺っていた天使達が飛び出してきた。
    宥める者、フォルネウスに冷たい目を向ける者、別の討論に熱中する者──ざわめき出した泉の辺りを、フォルネウスは後にした。
    後ろから大きな声で待つべしと掛けられた気がしたが、聞こえなかった振りをした。
    ただ、ちらりと横目でエデンの方を伺った。
    青々と茂る木々が塀のように檻のように内外を隔てていた。何も、誰も、こちらを見返しはしなかった。
    先程の天使が「愚かな生き物」と口走ったのを思い出した。もしかしたら彼は見た事があるのかもしれない。人間を。
    フォルネウスはゆっくりと歩きながら思った。

    (彼が羨ましい)
    と。
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