いつの間にか『天才の親友』の立場を手にしていた、寂雷と関わってわかったのはコイツは本質的には無節操で、大人しく文学少年をしていたのはそれしか知らないだけだった。
多少他人とのコンタクトの糸口を掴んだとはいえ、浮き世離れしたアイツは相変わらず遠巻きにされていた、それでも同級生の大半は良識的な奴等だったし、群れるのを余り好まない俺にとっても寂雷の隣とアイツと介した周りとの距離感は心地よかった。
必然のように側にいた俺等は若さのまま一線を越えた。
俺は、恐らくアイツもこの関係が途切れることは無れいと若さ故の全能感から過信していた、戦禍が無けば、あの手紙が来なければ、いや、何もなかったとしても結局はどこかで。
俺達は根底から別の人間で、同じ年齢というだけで学校という箱庭で少しでも楽に呼吸をするために寄り合っていただけだ。
世界も、俺達の関係も破綻したまま時間だけが過ぎていった。
数年前、"力"の在り方とこの国の形まで変質させた大騒動の中にアイツを見つけた。
何をやらせても頂点に立てるような奴だった、驚く程のことでもない。
「君があの会場にいた時は本当に驚いた…」
マイクを持て、戦いの舞台に共に上がれと目の前に
選択肢出された時、年長者としてなんでおまえが選ばれてるんだ心当たりはあるのか、十四まで勝手に巻き込もうとするなとか言うべきことはごまんとあるはずだったのに。
「…挨拶をしておきたい奴がいたからな」
並び立って、戦える、その誘惑はパンドラの箱の底の希望の如く写った。
十何年と経っても俺の根底はこれっぽっちも変わってないことを突きつけられた。
愛車を郊外まで飛ばしたのはこっちの都合を気にかけないガキ共の対策が主な理由だ、余程ラジオの内容が気に入ったのか、寂雷は静かに助手席に座している。
初めはただのからかいのつもりだった、ろくでもない誘い方をすれば表すのは呆れか、嫌悪か、困惑か。
だが返ってきたのは逡巡にしては短い沈黙からの同意の言葉で、着いたホテルの地下駐車場で最後の審を問えば泣き出しそうな顔で睦言のような甘い言葉を紡いだ。
何でお前までこんなことで心を動かしてるんだ、俺との過去なんて、無くしたモノの内に入らないだろうに。
それとも、まだ、俺のことが好きなのか。