見極める男「うん。今なら大丈夫だと思うよ。」
「おお、恩にきるぜ!」
二振の目線の先には、縁側に腰掛けて読書に耽るへし切長谷部がいる。鶴丸国永は礼を言うと、墨汁まみれになった報告書を片手に、我が本丸の近侍へと近づいていった。鶴丸がこの報告書の替えを貰いに行くのは三回目だったので、機を伺う必要があったのだ。燭台切は庭で洗濯物を干しながら、事の次第を見守った。鶴丸の持っている物に気付いた長谷部は怪訝な顔つきはしたが、ため息をついて近侍室の障子を開けた。それから、鶴丸に何やら小言を言いながら近侍室の棚の中を漁っている。どうやら、大目玉を喰らわずに済んだようである。眉間に皺を寄せながらも新しい用紙を引っ張り出してきた長谷部を見つめて、燭台切は微笑んだ。彼のそんな様子ですら、可愛いなあと思った。
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