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    桜田(sakurada)

    @ne_fau

    にょたと女装落書き置き場

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    桜田(sakurada)

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    ネファ小説
    (前書いたやつ恥ずかしくて消したけどせっかく書いたので載せ直し)

    Candy that shows emotion前略

    ネロが一人で商店街に買い出しに行ったある日の帰り、突然「人の感情が見えるようになる」という飴を無理やり渡された。最初は断ったが色々あって受け取った?まあ捨てればいいかと思ったのだ。

    結論から言うと――
    負けた。ちょっとした、ほんのちょっとした好奇心に。
    だって、「すぐに効果は切れる」と聞かされていたし、まあ、害もなさそうだったし。

    ぺろり、と一口。
    舌の上で甘ったるくとろけたその瞬間から、ネロの世界は一変した。

     

    ___

     

    次に顔を上げたときには、もう遅かった。

    道を歩けば、目に映るすべての人間の“感情”が見えるようになっていた。

    犬耳にしっぽが付いたシノは、何かをしてヒースに怒られている最中なのに――どこか嬉しそうだ。
    ……早く部屋に戻ろう

     
    リケは地面で転げて「悲しい 痛い」と全身で表現し、ミチルはその後ろで「あわわわ」と慌てて右往左往している。
    感情が見えるって、なにかこう、カラフルで、そして……目にうるさいもんだな。

    リケのケガの処置をミチルと一緒にしてやり、部屋に帰る途中オズに出くわした

    オズはと言えば、道端でぼーっとしていて、頭の上にはなぜか「ポトフ たべたい」の文字が浮かんでいた。
    ……分かんねえ!オズの考えてる事はこんな事なのか!?、?

    俺はそっと、足早に帰宅した。
    こんな喧騒、脳内までも巻き込んでいたら正気でいられない。

    「引きこもって寝よう……」

    まるで冬眠に入るかのような気分で、俺は毛布に潜った。

     
    _____.

     

    次の日の朝――。

    チュンチュンと小鳥が鳴いている。
    どうやら世界はまだ続いているらしい。
    伸びをして、体を起こすと、町の朝は意外と穏やかだった。

     

    キッチンでカインと出会いいつも通り軽くハイタッチをする。

    「今日の朝食はなんだろうな」

    ……頭の横に浮かぶ感情は、やっぱり「朝ごはん」だった。
    いや、お前も飯の事かよ!!

    ネロは今日の朝食に気合いが入った。
    みんなやっぱり飯が大切なんだ。


    __
     
    朝食もほとんど作り終えたその時、背後から声をかけられた。

    「おはよう」

    振り向けば、ファウストが、半分眠そうな目をこすりながらキッチンから現れた。

    「はい、今日はガレット」

    差し出された皿の上には、ほんのり焼き色のついたそば粉のガレット。
    香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

    ファウストの頭の上に、ふわっと花が咲いた。
    ……比喩じゃない。本当に。

    「嬉しい。ありがとう」
    彼は、心からの笑顔でそう言った。

     

    ――へへ。

    思わず、顔が緩んだ。
    この“感情”が見える力も、悪くないかもしれない。
    なんてな。照れ隠しに肩をすくめる。

    「どうしたんだ?」

    ファウストが首をかしげる。

    「んー……なんにも」

    ネロは笑ってごまかした。 

    __

    その後、今日は予定が無かった為に二度寝をキメたファウストは数時間後ベッドから、のそりと起き上がる。

    すくっ、と立ち上がり中庭に行きそのまま、
    丸くなっていた猫のもとへ。

    「……よしよし。おはよう」

    くすぐったそうに笑いながら、毛を撫で、しっぽに指を絡めて遊んでいる。
    猫もまんざらでもない様子で、のどを鳴らしている。

    ――見てるこっちが照れくさくなるくらい、優しい時間だった。

     

    やがて猫が去っていき、ファウストが一人呟いた。

    「……かわいいな」

     

    その直後、背後から声がする。

    「せんせー、猫と楽しかった?」

    「み、見てたのか?!」

    振り返ると、ネロが、にやにやと立っていた。

    「秘密〜🎶」

    肩をすくめて、ネロはファウストの反応を楽しむ。
    彼は恥ずかしそうに頬を染めながら、ふいっと目を逸らした。




    そんなこんなでまた1日を過ごし、
    夕方には、効果は綺麗さっぱりに消えていた。

    けれど、最後に見えた“感情”が、やけに暖かくて。
    思い出すたび、胸の奥がじんわりと熱を持つ。

    ……また、あの飴、舐めてもいいかな。
    もちろん、ほんのちょっとだけ。


     
    【完】
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