🟢新刊サンプル🟢 はるか上空を雲が流れていく。あそこまでどれくらいあるだろう、と地に足をつけたままでイツキは思った。隣にネイティオが同じようにして立っている。一緒に空を見ているが、自分と同じ事を考えているかまではわからない。
パシオの高山帯の奥地、ほとんど人の来ることの無い場所で、しばらく瞑想や修行をしていたが、そろそろ切り上げて戻ろうかと思い始めた頃だった。野生のポケモンもいないパシオでは、あとは人が入らなければ他に何者の気配もなく、集中出来るのでイツキはこの場所がすぐにお気に入りになった。
「そろそろ戻ろうか」
「トゥー」
飛び跳ねるようにふわりと浮いては着地を繰り返すイツキに、ネイティオは飛びながらついてゆく。まだ飛べなかったネイティの頃、ぴょんぴょんと飛ぶ横で、イツキがこうやってくれたのが面白くて楽しくて、今でも時折こうしている。
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