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    AMAU

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    本編の前日譚。エリザ達と会う1年前くらいのお話。
    ★は世界観や登場人物の過去などの補足が入る単語です。後半に補足が出て来た順にまとめてあります。

    ##Phantom,lakeside.

    未完の女神像ジーク「…君は、今日も美しいね。…そして冷たくて心地いい」

    頭と腕のない石造を★素手で優しく撫で、満足した様子でジークは自身のコレクション部屋を去った。


    ------



    ヴィル「わ~たのしみだなあ~!」

    ヴィルには気になっている部屋があった。
    その部屋とは、ジークのコレクション置き場でジークだけが部屋の鍵を所持している為、彼以外が入ることを許されていない部屋だ。
    使用人達からは、巷で流行っている魔法学園物小説に登場する隠された部屋とかけて「秘密の部屋」なんて噂も密かに飛び交っている場所だ。

    "秘密の部屋"となんとも魅力的な言葉を聞いてヴィルの幼心は期待と冒険に胸を膨らませていた。
    それからというもの、兄であるジークに自分も入ってみたいと何度も伝え、最初は許可を出さなかったジークであったが、ジークの専属騎士であり、自分と兄の保護者のような存在のランバーに助力してもらったおかげで、ランバー同伴ならと渋々了承を得た。


    秘密の部屋の扉の目の前で期待を膨らますヴィルに対し「…中の物には触れないでくれ」と忠告し、ジークは鍵を開けた。

    ヴィル「わ~!凄いね!白鳥の置物とか絵画とかいっぱいある」

    部屋の中を観まわすと、"★白鳥"と呼ばれる鳥を模したものが多く飾られていた。


    ヴィル「これなんだろう」

    様々な展示品の中心に黒い布で覆われたものを発見し、思わず無意識に惹かれるように布に手を伸ばしてしまい中を覗きこむ。中には白い女性を模した石像の脚が観え、そのまま上の方へと視線も向ける。

    ヴィル「あれ…これって」

    その瞬間、ジークが布を持っていたヴィルの腕を勢いよく引っ張ったことで、布が勢いで下に落ちた。

    ジーク「…中の物には触るなと言っただろう。ヴィルヘルム・アイソポス」

    ヴィル「…あ、ごめんなさい。ジークフリート兄様」

    話す時はいつも自分を愛称で呼ぶジークにフルネーム呼びをされ、委縮したヴィルはすぐに謝罪した。
    そして、目の前の露わになった石像を観た。
    ああ…やはりそうだ。と思ったヴィルは、善意の気持ちから聞いてしまった。

    ヴィル「ねえ…この石造、なんで手とお顔がないの?かわいそうだよ…あっ!そうだ、ヴィルが粘土で作ってあげようか」

    そういった瞬間、気づけばヴィルはジークに首元を掴まれていた。
    ジークの瞳には生気を感じない程、黒くよどんでおり、手には力が入る。
    ヴィルが息苦しくなり始めたところですかさずランバーが間に入った。

    ランバー「…ジーク、説得したときも言っただろう。彼は★"とても純粋"なんだよ。大人になった"今"でもね。兄であるキミが一番よくわかっているはずだろう」

    そう言われて我に返ったジークは掴んだ手を離し、ランバーにしか聞こえない声音で「…なにが兄であるだ…」と自嘲した。

    ジーク「…観終わったなら帰ってくれ。鍵はこの人(ランバー)に渡してくれればいいから。僕は書斎へ行くから」

    そう言い、去りゆく間際にヴィルに「悪かった…」と言い残しジークはその場を去った。



    ヴィル「ヴィル…また余計な事しちゃったかな…兄様にこれ以上嫌われたくないよ」


    今にも泣きそうなヴィルの頭をランバーは優しく撫でた。

    ランバー「ヴィル…キミは努力家で優しい子だ。本当はこの部屋の事よりもジークの事の方が気になっていたんだろう…好きな相手を知ろうとする努力をするのはとてもすばらしいよ。」

    ランバー「あの像は、勝利の女神といってある女性を模した物だったそうだが、落雷で頭部と両腕で壊されてしまったらしくてね。修復しようにも基になった女性も、作り手も依頼した主も全てわからずじまいで、写真すらなくて修復できなくてね。でも、そのうち未完だからこそ美しい。むしろそれこそが完全体だといわれて次第に人々に愛された作品なんだよ。…だからこそ修復は今となっては必要ないものなのさ」

    ヴィル「…そうだったんだね。ヴィルには未完の美しさって、よくわからないけど兄様に悪い事しちゃった。」

    ランバー「…私も個人的には★"レディ"には元気な姿でいてほしいと思っているよ」

    ランバー「それに、ジークも本当はそう思っているんじゃないかな」

    ヴィル「?」



    --------
    (ジーク)

    湖畔で運命的な出会いをした人。僕を救ってくれた人。
    貴女の姿は絶対忘れないと思ったんだ。

    けれど時が経つにつれ、貴女の声も顔も、優しく差し伸べてくれた手の感触も段々と曖昧になっていく…自分が怖い。

    白髪のウェーヴの髪に、琥珀色の瞳、大きな翼…気づけばそれくらいしか明確に思い出せない、この恐怖。偶像でもなんでもあなたを忘れない材料になるならなんだっていい。

    自分には未完の美や偶像なんてものは本当は必要ない。貴女そのままがいい。だけど明確に思い出せない今となっては、曖昧に作り直された物を観るくらいならいっそ…この未完成な美を愛でた方がよっぽど美しいと思えてしまう自分がなんとも、情けなくて嫌だ。

    ああ…早く会いたい…冷たい貴女ではなく、生暖かい生きた…貴女に触れたい。





    未完の女神像[完]



    ---------
    以下物語の補足。




    ★…ジークは基本、魔法で出来た黒グローブをしており、これは幼少期自身の能力が暴走した際、逃げた先で湖畔にいた女神に貰ったもの。これが無いと能力が暴走し、生物の意識を変えてしまう(脳に干渉し廃人にしてしまう)。ただし女神には能力が効かない。周囲には本当の能力であるを隠し、透視能力と偽っている。


    ★…この世界で白鳥は神の使い(神子)とされ、この世に実在するらしいが、その存在を実際に確認できたものはいないとされる伝承と信仰の鳥である。
    生まれつき、異能の高いものを神の使いと見做し、「スワン」と呼ぶ風習もある。


    ★…ヴィルは幼少期、ジークの能力の暴走に巻き込まれて白雉(幼い心のまま、精神年齢が止まる)状態になり、ヴィルは当時の事を覚えておらず、ジークはその事を深刻に気にしており、それ以降ヴィルとは距離を取っている。


    ★…ランバーのここでいう言う「レディ」はこの像に対してと同時に、自分の大剣の精霊である「レディ(姉だったかもしれないもの)」に対しても言ってます。
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