わくわく本丸「お姉ちゃん、真田十勇士って知ってる?」
突然、大事な要件があると本丸に訪問してきた妹の真魚が、開口一番問いかけてきた。
「知ってるも何も……有名な話じゃん?」
「そーなの?あたし知らないんだけど」
「あんたは政府の職員になったんだからもう少し歴史を学んだほうがいい」
えー?とか言いながら髪先をくるくる指でいじる妹に、要件は何なのかと問う。
「あ、それでね、真田十勇士をね、お姉ちゃんの本丸で管理してほしいの💗」
「は?ちょっと、意味が分からないんだけど」
「だから、真田十勇士をね、」
「そうじゃなくて、説明をちゃんとしなさいよ」
ため息が出そうになるのを堪えながら、内容を問うたところによると、監視対象であったとある本丸でとある時代に刀剣男士でもなく顕現した真田十勇士。史実ではない彼等が何故顕現したのか詳しい事はよく分からないけれど、一度ならず二度三度と顕現する彼らに政府は重要監視対象としてその真田十勇士を管理したい、それには審神者が必要でその管理者に白羽の矢が当たったというのが私、ということだった。
妹の話は肝心な所が有耶無耶で、全然理解できなかったけれど。
「なぜ……私……?」
そんな重要なことはもっとレベルの高い審神者がやるべきではないか?
「あたしがね、お姉ちゃん推しといた!」
「は?」
「だって、お姉ちゃんだって成績上位じゃん?!それに報告とかも様子見とかもしやすいしって言ったらなんか決まった!」
「……」
驚いた。政府ってこんな適当だったっけ?思わず顔馴染みの上司の顔を思い浮かべるが、仕事は出来るがあの人も大概適当だった。
無い話でもないか……。
ちょっと頭痛くなってきた……。
「それでね、その真田十勇士の方達がね門の前に居るから、今日からよろしくね!」
「は?」
真魚は連絡用のこんのすけに十勇士達を呼んでくるように伝えている。
「ちょっと待って、今日から?は?今日から?」
こいつ今なんて言った?
なんでもっと早くに言ってこないのか、せめて1週間前に言ってくるべきじゃないのか、だいたいいつもギリギリに連絡寄越す癖を直せと真魚の胸元の開いたブラウスの襟元を掴みかかりあっけらかんとした顔の妹をがくがくと揺さぶった。
「だって忘れてたんだもん……それにお姉ちゃんの本丸余裕あるし、10人くらい大丈夫じゃん……」
「そういう問題じゃない!っていうか、忘れてただって?!」
真魚の言葉に思わず声が荒らぐ。そうこう言っている間にそれまで口を挟まずにずっと傍にいた長谷部が厨当番に人数の増加を告げに走っていった。
「ごめんて~~~」
ぎゃあぎゃと言い合っていたら迎えにいったこんのすけが戻ってきており、部屋の入口に赤揃えの装束にそれぞれ六文銭のモチーフがあしらわれた男達がその後ろにずらっと並んでいた。これが件の真田十勇士なのだろう。今のやり取りハラハラとした顔をして見守っていた。
「そういうわけで、彼らが真田十勇士」
「……っ」
どうしてこいつは……ほんとに……。
言いようのない怒りを抑えながら、十勇士と紹介された者たちを改めて視線をやるとこれまで心配そうに見守っていた彼らのうち、リーダーと思しき、眉を八の字に寄せたセンター分けの長髪の男が深く頭を下げてきた。
「すまない…僕たちもよく分からないんだが、世話になることになるらしい。
」