むかしむかしの話。まだ神さまが人間の近くにいた時代。月の女神さまはたいそう嫉妬深く、怒りっぽいお方だった。彼女は自分のものは大切に、花よ蝶よと扱うが、こと大切なものに手を出されたときには烈火のごとき怒りをみせたらしい。
そんな月女神にはお気に入りの従者がいた。柔らかな亜麻色の髪に宝石のような青い瞳。人のことを想いやれる無性のその子を月女神は贔屓し、可愛がった。しかし、その従者は女神さまを裏切って、人間と駆け落ちした。怒った女神さまは従者に呪いをかけた。
女神が愛した美しい姿で永遠をむかえる呪い。
いまもその呪いは従者の子孫を蝕んだ。
♢♢♢
この世界は不思議なものに溢れている。
夜行フクロウと呼ばれる長命な獣人、血族と呼ばれる吸血鬼たち、人間になった熊。甘やかな味のする妖精。
15561