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    初めて小説というものを書いてみました。内容もあんまり濃くはないのですが、暇つぶしにでも読んでいって下さい。

    #文ストプラス
    bunstPlus

    夏の残り香を探して夏が過ぎ、秋の初めの風が体を掠めたあたりに、太宰治という得体の知れないという言葉がもっともよく似合う、昔からの友人から連絡が来た。

    "今日は寝ないで二人で海を見に行こう 偶の夜更かしがしたい"

    この一通のメールから、今日は二人で海を見に行くことになった。丁度、明日の仕事はない。その事実による解放感から、私の非日常への旅心というものを余計に刺激した。

    しかし何故太宰は私を誘うのだろう。そして、何故夏が終わったこの時期なのだろう。この二つの疑問が私の脳内に置き去りにされたまま、車は海へと走った。

    「最近、中々忙しくてね。新人の子が入ってきたのだけど、彼が中々に厄介事を引き寄せる体質なもんで。毎日色々な事件が起きる。」

    「そうね。新人の子は知らないけど、治君は何だかんだ言って、厄介事に片足突っ込んでいくタイプよね。」

    昔からの友人である私は、彼の昔の行動に思いを馳せる。しかし、彼が厄介事に片足を突っ込む理由は、昔よりマイルドな、シンプルに人を助けたいという思考に基づいているものに変わっていったように思える。と言っても、やはり奇行と呼べるような行動をすることもある。そこら辺のよく分からないあれこれを含めて、太宰治という人間は少しポジティブな人間へと変わっていった。

    「ほら、厄介事に巻き込まれる大変な私を演じれば、君が私を心配してくれるだろう。」

    「心配なんかしない。どうせ、自力で解決するんだから。」

    「つれないなぁ。」

    そんな他愛のない会話をしながら海岸線を走らす。現在の時刻は朝の4時だった。周りは明るくなり、朝の風が少し肌寒い。秋を象徴するような紅葉や金木犀の香りはしない。それが何だか少し、名前の無い季節のような気がしてむず痒い。

    「もうすぐ目的地だ。思ったより早く着きそうだね。この時間の特権だ。」

    そう彼が言った10分後、二人は浜辺を歩いていた。

    朝方の海は少し眩しい光をまとっている。少し恐怖さえ感じるような明るさだった。私は、その光景に怖気づき、歩くのを躊躇ったが、彼は私のそんな姿を振り返って見るわけでもなく、ただ足を進めていく。

    「この時期になると、急に人が居なくなるよね。つい半月前までは沢山の人で賑わってたのに。」

    学生の夏休みが終わったこの時期。つい最近の人の多さとは打って変わり、周りには誰もいない。

    「そうだね。でもこの閑散さが私は好きだよ。他の人が味わえない時間を味わっている感じだ。」

    「私は寂しい。前までは人気だったものが、時間の経過と共に忘れ去られてしまっているみたいで。」

    世間からの注目を失ってしまったこのビーチを見ていると、何だか少し切ない感じがしてしまう。人がいないのも考えものかもしれない。

    「何故そんな悲しそうな顔をするんだい?確かに時間と共に景色は変わっていくかもしれないが、こうして君と二人で来れたことによって、私にとって最高の景色になったよ。」

    彼がこちらを振り返る。振り返ったその姿が凄く美しく、背景の海と相まって、彼の容姿の良さを改めて感じさせらているようだ。

    「治君、私は貴方のそういう口が上手い所が大嫌い。それに、時間の経過というものは怖いもので、今二人で見ている景色も変わってしまう。きっと来年はこんな景色見れない。」

    私の少し拗ねたような返答に、彼は微笑んだ。いや、もしかしたら面白くて笑ったのかもしれない。彼の思考はクルクル回る。もしかしたら、私の気持ちを見透かして楽しんでいるのかもしれない。結構分かりやすい発言をしていることは認めるが。

    「来年も見に来よう。再来年も。毎年、時間が許す限り。私は、君との関係を時間が経っても変わらないものにしていきたい。」

    この台詞は、私に対しての告白なのか。それとも何時ものくすぐったいセリフを言っているだけなのか。面白がって反応を楽しんでいるのか。はたまた、友人として一緒にいたいというものなのか。

    答え何てずっと前から分かり切っていたように感じる。でも、やっぱりその先に進めないのは、変わるのが怖いからなのだろうか。

    ただ一つだけ確信を持って言えることは、治君は口が上手い。
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