幸あれ「モティさん。……いないのか……」
昼間は開け放たれている玄関をくぐったところで声を掛けたが、お目当ての人物はいないようだった。この時間帯は家にいると言っていたのだが、タイミングが悪かったな。頼まれた資料だけならテーブルに置いておく事も出来るが、シームーンさんからの預かり物もあるため出来れば直接渡したい。
室内を見渡す。昼過ぎのあたたかな日差しが窓から差し込んでいる。部屋はキレイに整頓されているけど所々乱雑に資料が積まれていて、そういうところ、俺は結構好きだなと思う。
キッチンを覗く。ここにもいない。洗われたふたり分の食器が並んでいるだけだ。水滴がパタリ、と落ちた。
「裏庭かな」
ふと思い付いて向かうが、ここでもなかった。剣の稽古に使っているというマシンゴーレムにちょうど日が当たり光っているのが見えた。
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