邂逅 周りはたなびく青一色だった。
それを見るたび、胸が締め付けられる感覚があった。深く湛えられた清水のような青。
晋の旗。
昔、背負って戦った魏国の旗には誇らしさを覚えた。父と立つ戦場に心躍らない訳がない。歴戦の勇将たち、尊敬する父と共に、偉大な主の覇道を支える一助となるのだと勇んだ頃は、その旗を見るたび力が湧く思いがしたものだ。
いつしかその旗は、先人たちの遺したそれとは異なるものとなり、次第に夏侯覇を追い詰めていった。そしてとうとう命を脅かすものと成り果てる前に、夏侯覇は国を捨た。逃げ出した臆病者だと、父の仇を頼る親不孝者めと、父の足元にも及ばない軟弱者よと、青い旗は自分を追い詰め続けた。
しかしそれも、失われてしまった。
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