風ふっと吹き抜ける風のように、アイツは言った
「じゃ、ちょっくら行ってくんな」
まただ。またいなくなった
それは責め立てる春の風
または、天空を駆け抜ける秋の風
俺の手には届かない
なぜ届かないかって?別に背が低いからじゃないぞ
ただ、アイツと俺の間に横たわる大きな(そりゃもうとてつもなく大きな)違いが、俺に手を伸ばすのを諦めさせた。バカなことに、最初は同じだって思っていたのさ。でも違った
あのさ、本当はずっと追いかけたかったよ。でも大きな違いに足踏みしてる上に、アイツは風のようにいなくなっちまうんだ。そんなのもう、ここに立ち尽くすしかないじゃないか。道端の道祖神みたいに、風がまた帰ってくるのを、待つしかないじゃないか
やがて俺は、おれの横にいてくれる彼女の手を取り、アイツの孤独を想う