うちよそショート・アズラとリエちゃんのうちよそ。
ここはポーン達が集うポーンギルド。多数のポーン達が覚者に雇われるのを待機しながらそれぞれが思い思いに過ごしている。そのポーンギルドでとある事について話をしている二人のポーンが居た。
「ねぇ、アズラさんはどうやってそんなにオッパイが大きくなったの?」
と唐突に質問をしたのはリエというポーンの少女。彼女は所謂幼児体型。故に胸の大きい人物に嫉妬心や憧れがあるようだ。
「どうやって…?急にそんな事聞かれても…。第一何で胸を大きくしたいのよ…?」
やや呆れ顔になっているのは同じくポーンのアズラ。彼女はリエとは対照的に筋骨隆々な体格に豊満な胸の持ち主。彼女はリエの質問にいまいちピンと来ていない様子だった。リエはアズラの疑問に対し熱弁し始める。
「アズラさんはカッコいいし強いし、同じようなポーンになりたいの。だからまずはオッパイなの!オッパイがあれば弓の腕も良くなるし、料理も上手く作れるようになると思うの!」
「それって私にオッパイが付いてるの?それともオッパイに私が付いてるの?」
アズラが呆れ気味に話を続ける。
「でも胸が大きくても不便よ?弓弦は引っ掛かるし肩は凝るし変な輩が寄ってくるし…。」
と胸が大きい事の不便さについて話していると…
「何を言ってるの?ボインってのは大きければ大きいほど良いものよ?何せ同じ重さの金貨袋よりも価値が大きいんだから。」
と二人の話に横槍を入れたのはアズラのマスターである覚者アラネア。
「金貨袋以上の価値というのは同意だけど大きいほど良いってのはどうかな?サイズよりも形状でしょ?スレンダーな胸という健康美の魅力も捨てがたいと思わない?」
アラネアに対し小さい胸の魅力を語るのはリエのマスターである覚者ミヤ。
「お前達の言いたい事はわかる。だが胸の大小について話してる時点で間違いなんだよ。胸よりも尻だろうが!」
胸よりも尻に魅力があると語るのはリエの姉であるレイのマスター、覚者ミハ。
「・・・・・・・。」
3人の突然の乱入に沈黙が訪れる。
「さて、爆裂の矢は3本あるな。」
「あ、私30本持ってるよ。」
ポーン二人が沈黙を破り背中の矢筒に手を掛けた所で3人の覚者は慌てて脱兎の如く逃げていった。
「はぁ…まったくあの3人は…。」
「やっぱり私…このまま小さい胸のままなのかな…?」
涙目になりつぶやくリエ。
「心配しなくてもポーンだって時間が経てば大きくなるかもしれないよ?私だって時々胸が張って困ってるんだし。」
「本当!?楽しみだなぁ!」
アズラの励ましの言葉にパァっと顔を明るくするリエ。しかし彼女は後にとある事情から涙する事になるが、それはまた別のお話。
・ナギとスヴェル君のうちよそ。
ここはグランシス半島のとある場所。ここで二組の覚者とポーンが野宿をしていた。
「うーん、あのワン公どっかで見た事あるような…。」
覚者ナギは少し距離を置いた場所にいる覚者セラとそのポーン、スヴェルを見ながらつぶやく。
「マスター、彼を見た事があるんですか?マスターの故郷にもポーンは居たのですね。」
ナギのポーン、ダイダラは彼女の故郷にポーンが居た事を意外に思いつつ質問する。
「見たっつーか、昔に殺しやら潜入やらしてた時に一緒に任務についた事があったような…。まぁ組織にとっちゃ戦徒なんて使い捨てで顔も碌に覚えちゃいねーんだけどよ。」
ナギが間者の頃に任務を共にした戦徒の中にスヴェルと似た人物が居たようで、ナギはずっとスヴェルを観察している。スヴェルの方はというとやや頬を染めながら自身のマスターであるセラと何か話しており、まるで付き合いたてのカップルのようだった。ナギの知る昔のスヴェルと思われる人物はもっと静かで冷酷な感情の無い殺人マシーンというような雰囲気だった。
「あー、人違いだな。昔見た奴はワン公ってより狼って感じだったしな。」
「そうですか、しかしマスターが昔の事を覚えているなんて珍しいですね。」
「あ?軽口でナマ言ってんじゃねーぞクソボケェ!!」
一方その頃、スヴェルは驚異的な跳躍力でダイダラの顔面に飛び蹴りをするナギをじっと見ていた。
「スヴェル君、ずっとナギさんの方見てるけどどうかしたの?」
「いえ、遠い昔にナギ様と似たような人物を見たような気がしまして…。」
しかしスヴェルの遠い記憶の片隅にあるナギの姿は、現在の姿とは似ても似つかないものであった。
「しかし人違いでしょう。私の記憶での彼女は凶暴でしたが冷たい殺気を纏った恐ろしい人物でしたから。」
実際の所、二人とも以前に少しだが共に行動をしていたのだ。しかし昔の事な上に現在は性格も雰囲気も大きく変わっていた為、お互いに気づいていないだけであった。そしてこれからも気づく事は無いだろう。