嬢と情死と錠剤(未完) 自殺未遂で病院に運ばれて、一緒に逝くはずだった女の死を聞かされたのは何度目か。今回は川に飛び込んだ訳でした。死ぬ前に打ち上げられてしまったようで、なんだかんだ生きている。しかし、流木が腕に刺さって手術した。痛々しい手術痕が目に入る。朝日奈先生の腕がいいから、きっと痕もすぐ薄くなるだろうとのこと。その云々を話した後、先生はこっそりとこう言った。
「菓子代ちゃんと返せ」
ああ、あのあまり良くない白昼夢の話だろう。確か、きびだんごが必要だとなった。私と夢で会った人たちは駄菓子屋で駄菓子やきびだんごを買った。正確には、朝日奈先生の奢りだ。私は財布を忘れたから……というか私に財布を持ち歩く習慣はあまりない。夢にまで反映されていたか。
「さて、なんのことかな。手元にはボンタンアメのオブラートすらないのに」
「覚えているじゃないか」
「……一緒に逝くはずの女置いていかれて、傷心中というのに」
そう言うとため息をつかれた。実際問題、朝日奈先生の財布からその分のお金は減っていたのだろうか……? まあいいや。私に支払う気がないことを察したのか、きっと他の患者の診察やらがあるのか、先生は、ともあれお大事にと病室を出ていった。
入院もすっかりと慣れてしまった気がする。いかんせん、数が多いからだ。未遂の度にこうして目覚めたら、病室の天井が見えてうんざりする。