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    miantesoro

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    イレブンとカミュのクリスマス準備〜当日のイラストのお話です。イラストが、このお話の挿絵のようになっています。

    ファミリークリスマス12月7日

    「ふぅ〜やっと帰ってこれた」
    疲れをにじませる表情のイレブンが、さらさらな髪の毛を掻き上げる。
    「思ったより時間がかかっちまったな」
    カミュも同じように、左手で美しい青髪を掻き上げて整えながら答えた。
    「でも、いいものが手に入ったから良かったよ」
    「だな。さあ、さっさと支度を始めるぞ」
    外は真っ暗ではあったが、腰を落ち着ける前にと、夕食も後回しに準備を始めた。

    二人は先日、ユグノア復興時に伐採した小ぶりの針葉樹を一本もらってきていた。これを今年のクリスマスツリーにしようと打ち合わせていたのだ。
    「ロウじいさんも来れたら良かったのにな」
    「今年はサマディーのお城に招かれてるんじゃ、仕方ないよ」
    「本当にそれ、イレブンは行かなくていいのか?」
    「カミュもしつこいなぁ。僕だって自分の家族と過ごしたいんだから、カミュの気にすることじゃないよ。それに、サマディーのパーティーに呼ばれたのは本当にロウじいちゃんだけなんだから。ユグノアは関係ないってことだよ。」
    イレブンは淡々と、何度も繰り返して説明したことを再度説明する。カミュが心配になる気持ちもわかるが、自分だって家族との時間を大切にしたいのだ。この話をするたびに、カミュは「家族」と言われることにくすぐったさを感じているのも正直なところのようだ。だからイレブンも、繰り返して説明することに抵抗はない。まぁ、とはいっても、そろそろ自分たちのクリスマスに集中してほしいところではある。

    クリスマスのオーナメントは、昨年二人でペイントしてカラフルに作ったものがあるので、それを今年も使うことにした。
    「なぁ、この前本で読んだんだが、よその国では靴下にプレゼントを入れたりするらしいぜ」
    「そうなんだ!じゃあ今年は靴下もツリーに下げようか」
    そうイレブンが答えると、すぐに鍛冶台を出してきて靴下をあっという間に作り上げる。鍛冶台に向かう表情は、カミュが好きなイレブンの顔の一つだ。この表情を見てきたのは、仲間内でもカミュが一番多いと自負している。
    イレブンは出来上がった靴下を「飾って」とカミュに渡し、イレブンはオーナメントを抱えて立ち上がった。
    が、
    「あ!!」
    イレブンが慌てて駆け出す。
    「あ、おい、イレブン!……あれ…?」
    驚きと戸惑いの声を上げたカミュの視線の先で、ツリーの頂点を飾るはずの星が、なんと宙を移動していた。
    イレブンはすぐに宙を移動していた星を掴み上げると、そのままツリーの一番上に、その輝く星を飾った。
    「びっくりさせてごめん、カミュ」
    「いきなり走り出すからびっくりしたが…あれか、例の、イレブンにしか見えないっていう」
    「そう、それそれ」
    イレブンは苦笑いを浮かべて言った。カミュにもいつだったかその存在は伝えていたが、まさかいたずらを仕掛けてくるとは。
    「変わり者もいるみたいだね」
    「まぁ、どの社会にもいるもんだよな。さぁ、さっさと飾り付けを終わらせて、メシにしようぜ!」


    12月15日

    ロトゼタシアのクリスマスは、一年間無事に済ませたことを大樹に感謝する、ラムダの静かなミサが発祥らしい。それが、今では旅人によってあちらこちらの街へ伝えられ、その土地の文化と混ざってさまざまなクリスマスがあるようだ。

    そんなクリスマスの歴史に関する本を、先日カミュが読んだらしい。
    「イシの村のクリスマスはどんな過ごし方をするんだ?」
    とカミュがイレブンに尋ねたのが一ヶ月ほど前。
    「この村では、家族でゆっくり、ご飯を食べたりプレゼントを贈り合ったりするよ」
    「それなら、今年はイシの村の文化に倣ったクリスマスにするか!」
    昨年は同居して初めてのクリスマスだったため、二人でいろいろと(いろいろと)楽しんだのだが、今年はカミュの妹・マヤとイレブンの母親・ペルラを招いて小さなパーティーを行うことにしたのだ。
    そして今。カミュは便箋を前にして頭を抱えている。今までかしこまって妹に手紙など書いたことすらないのだから仕方がない。招待状なんてなくてもルーラでひとっ飛び、メダル女学園まで言って伝えてくればそれで済むのにと、カミュは昨日イレブンに抵抗してみたが、
    「大切な人にはきちんと手紙を送るんだよ。イシの村ではそうなんだ」
    とピシャリと言われてしまった。カミュにはこれが噓か本当かはわからないが、頑固なイレブンがそう言うのだから書くしかない。
    「調子はどう?」
    とイレブンが金槌片手に肩を小突いてきた。ちょっとニヤついた顔だ。
    「おいおい、相棒は鍛冶に集中してくれよな」
    カミュが苦々しげに言う。手紙の文章は、さすがに恥ずかしくて相棒にも見せたくない。
    「鍛冶の方は、大丈夫、任せてよ。せっかく手に入れてきた素材を無駄にしないように集中してやってるから」
    「イレブンの腕前だ、心配はしてねえよ。こっちも集中したいから、そっとしておいてくれねぇか?」
    そう言うと「はーい」とニヤッとしてからイレブンは持ち場に戻っていった。

    もう一通書こうとしていたのがバレなくて良かった、とカミュは小さくため息を漏らした。


    12月22日

    「「メリークリスマス!!」」

    マヤの予定により、少し早いクリスマスパーティー開催となった。
    テーブルには、野菜、生ハムやエビを使ったオードブル、鶏をじっくりローストしてハーブを添えたもの、ケーキやジンジャークッキーなど、二人の手作り料理が並んでいる。(正確には、カミュがコックで、イレブンはアシスタントだった)さらに、ペルラからはシチューを、マヤからは学園で人気のパンを手土産としてもらった。学生も日頃世話になっているイレブンとカミュのためならと、おかみさんがわざわざ焼いてくれたらしい。
    「それにしても、アニキからの手紙には驚いたぜ」
    すっかり上品なテーブルマナーを身につけたマヤは、口の中の生ハムを飲み込んでからニヤニヤして話し始めた。
    「おい、マヤ…」
    「マヤちゃん、手紙にはなんて書いてあったの?」
    イレブンもニコニコして聞いている。遮るようなカミュの「おい!」は無視された。
    「何だ、イレブンは知らねぇの?まぁ、当たり障りのない文章だったよ。日付とか、時間とか。あとは、まぁ、待ってるぜってな。」
    最後の方はマヤの、そしてカミュの耳も赤くなっていた。手紙に恥ずかしそうにする姿はカミュとそっくりだ。これにはペルラも、イレブンと顔を見合わせてにっこり微笑んだ。

    「僕達から、マヤちゃんとお母さんに、プレゼントがあるんだ」
    イレブンはそういうと、小箱を2つ取り出してペルラとマヤに渡した。
    「まぁ!」
    「これは…すごいお宝だな!」
    二人とも箱を開くと目を輝かせた。
    「これはオレ達が買い付けに行ったんだが、なかなかそれだけの数は売ってなくてな。いくつかは自力で集めたんだ。大事にしてくれよなっ!」
    ペルラにはピンクパールのイヤリングを、マヤにはピンクパールのネックレスを、二人はそれぞれ贈った。ペルラには普段遣いにもよそ行きにも使えるよう、邪魔にならないイヤリングがいいだろうと考えたのだ。そしてマヤには、イレブンとカミュ二人で作った唯一無二のネックレスを渡すことで、ネックレスにまつわる記憶を良いものとしたかったのだ。
    ペルラがマヤにネックレスをつけている様子を、カミュは目を細めながら見ていた。その様子だけで、イレブンには何よりも幸せを感じた。カミュの幸せは、マヤの幸せがあってこそなのだと、イレブンは考えている。だから、この光景が何よりの幸せだった。
    「カミュ、」
    イレブンは、ズボンのポケットから小さな箱を取り出して、ペルラとマヤに気づかれないようテーブルの下でそっとカミュに渡した。
    カミュは驚いた顔をしてから受け取り、
    「イレブン、オレも、」
    と小さな封筒をイレブンに差し出した。

    夜になって、マヤはイレブンのルーラで学園へ戻った。クリスマス当日に学友とクリスマスパーティーをするからさっさと帰りたいらしい。マヤの世界も広がって良かった、というのはカミュの口癖になっていたが、二人はマヤが気を利かせてくれたことはわかっている。ペルラは、歩いて数秒のイレブンの実家に戻っていた。イレブンとカミュの新居は、イレブンの家の敷地内に建てていた。だから、今は家に二人きりなのだ。
    「今日は楽しかったね」
    ベッドに横になりながら、イレブンが満足げに言った。
    「そうだな。家族で過ごすクリスマスも、最高だったな」
    「まさか、カミュが僕にも手紙を書いていてくれたなんて、驚いたよ」
    「大切なヤツには手紙を書くんだろ?」
    「…カミュ」
    横に寝転んでいるカミュの額に、イレブンは心を込めてキスを落とす。カミュは目を閉じて、唇が触れているのを感じた。
    「イレブンも、まさかオレにも作ってくれていたとはなぁ。ちっとも気が付かなかったぜ」
    カミュがイレブンからもらったのは、マヤとペルラに贈ったものと同じピンクパールの、イヤーカフだった。
    「カミュが同じものを持っていたら、マヤちゃんも安心するかと思って」
    イレブンが優しく微笑みながら言った。カミュは、イレブンの、マヤやカミュ自身に対する優しさに胸が熱くなった。感謝と愛情を込めて、カミュもイレブンの丸い額に優しくキスをした。

    「…カミュ」

    二人の優しい夜が、溶けていく。
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