嵐の前の静けさ…?幻妖界にいる妖怪達は力を使い過ぎると心が砕け死ぬまで暴れ狂う。そんな話を前に聞いていた。…聞いてはいたし、今までもそんな光景を見てきた。目の前にいる妖怪もそうだと思っていた。
蒼空がよく知る妖帝の姿、暴走した半身。返り血がまだ新しいのか月の光に照らされて光り、その匂いはまだ新しく生の匂い。
それを拭うことなく妖怪の左目は蒼空を捉えていた。
(真夜中は危険と言われてたのに…言うことを聞けばよかった…!近道で森を通れば早く帰れると思って…)
「他のことを考えるたぁ、随分と余裕だな」
低い声の直後一気に距離を縮められ、背後にあった木の幹が背中に当たる。
目の前の妖怪…ぬらりひょんはとてもよく知っている。だがその顔を、その目を蒼空は知らない。
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