棄却 ふと目が覚めると、目の前は優しい花畑のままだった。
しかし、視界が一段低い。周りに咲き乱れている花々も、やけに背が高く見える。俺は自分に何が起こったのかわからず、ただ手――だと思うもの、を伸ばして花畑の外を目指した。
体が重い。というより変に動きが悪くて、立っての移動ができなかった。
俺は確か、月から舞い降りた『あれ』を倒した。それをしたかったわけではなかったが、そうせざるを得なかった。そして『あれ』を打ち破ったあと、俺の身体は急速に胎動を始め、俺の意識は暗くなり――――それ以降の記憶がない。
先程己の身体から聞こえていたおぞましい音は、俺の全身の骨が折れたことでも表していたのだろうか。いや、それにしては痛みがない。では、何故立てないのか。
3502