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    🥗/swr

    らくがきとSSと進捗/R18含
    ゲーム8割/創作2割くらい
    ⚠️軽度の怪我・出血/子供化/ケモノ
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    2017/12/30 過去作投稿
    ---
    Xenoblade2のメレフとカグツチの話。
    もしカグツチがコアクリスタルを云々したら、というifストーリーです。
    本編ストーリーとは微塵も関係ない内容となってますが、7話あたりまで進行している方向け。(2022/07/06)

    ##SS
    ##Xb2
    ##Xenoblade

    傲慢たる揺らめきは砲撃、爆発、剣戟の音。
    土煙が舞い上がる中には倒れ臥す一人の人間、そしてその身体を抱き起こしているブレイドの姿があった。
    「メレフ様!メレフ様ッ」
    ブレイドは狼狽し、必死に己のドライバーの肩を揺らす。
    「メレフ様、起きて…!お気を確かに」
    ブレイドの焦燥した呼びかけに反応したのか、ドライバーがぼんやりと目を開く。
    「……?……カグツチ、……か?」
    その声を聞き、ようやくブレイドの顔に安堵の表情が浮かぶ。
    「め、メレフ様っ……!目を覚まされたのですね!」
    ドライバーは朦朧としながら辺りを見回す。
    「私は……、どうなった?何が起きたんだ……?」
    「それは……」
    カグツチは少し言い淀んだが、
    「……説明致します。ですが、今はここから離れなくては。失礼ながら、移動しながらお話致しましょう。……さあ、メレフ様」
    メレフの肩を支え、立ち込める土煙の中を歩き出す。そして、何故このような状況に陥ったかを話し始めた。
    帝国軍に相手側の息のかかった者が複数いたこと。作戦には罠が組み込まれており、彼女を含む精鋭部隊は誘い込まれ、敵陣に侵入してしまったこと。
    強力な巨神獣兵器からの攻撃で部隊の大半が壊滅し――
    メレフも身体に大きな傷を受けたこと。
    「あの攻撃は敵味方もろとも吹き飛ばすつもりのものだったのでしょう。私が起き上がった時には、攻撃を仕掛けたはずの敵兵たちすら殆ど……。……ですが、皮肉ながらそのお陰で私一人でも残党を始末できました。しばらく追っ手が来ることはないはずです」
    「……そう、か」
    メレフの歩みは覚束ない。いくら幾多の戦場に立ってきたとはいえ、所詮生身の人間である。ブレイドのように即座に傷が塞がるわけもなく、ズタズタに裂けた傷口からボタボタと血が落ち失われてゆく。
    「ぐっ……!」
    メレフは激痛で膝から崩れ落ちた。息はすっかり上がり、失血で脳が冷え切ったような感覚に襲われる。
    「メレフ様ッ」
    カグツチは咄嗟にメレフの肩を支える。メレフの顔には隠しきれない苦痛の色がはっきりと見て取れた。
    「カグツチ……」
    「いかがしましたメレフ様……?大丈夫です、あと少しで……」
    そう主人を励まそうとするカグツチに、
    「……カグツチ、もういい。一人でここを離れてできる限り自陣まで戻るんだ」
    メレフは静かに言い放った。
    カグツチの顔が一気に蒼白に変わる。
    「な……、何をおっしゃるのですか私は……!」
    「スペルビアの宝珠であるお前をここでコアクリスタルに戻すわけにいかない」
    「」
    胸を刃で貫いたかのような感覚がカグツチに襲いかかる。それは、己のドライバーがまもなく息絶えるという宣告だった。咄嗟にカグツチは強い口調で反論する。
    「それは…貴女こそこんなところで倒れてはいけない方です!帝国には貴女が必要なのです。それに私はブレイドですが、あ……貴女は……死んでしまったら、終わりなのですから…!」
    反論の声が徐々に弱々しくなる。主人の肩を抱く手が震え、堪え切れず嗚咽が漏れる。
    「私は……いい。スペルビアには陛下がおられる。あの方は聡明だ……陛下さえご無事なら……きっと、大丈夫だ」
    「ですが……私は……」
    「私の命令が聞けないのか?」
    霞んでいく意識の中、メレフはあえて強い口調でカグツチに言い放つ。
    「……その命令には……、従えません」
    弱々しく呟くカグツチ。
    「申し訳ありません……、メレフ様。ですが、それでも……、私は……私が貴女を忘れることが耐えられない。せめて最期までメレフ様のお側にいたいのです」
    それを聞いてメレフは少し驚いたようにカグツチを見つめる。そして薄く微笑むと、そっとカグツチの頬を撫でた。
    「まったく強情な……」
    その力はあまりに弱く。腕はひと撫でした後あっさりと落ちていき、カグツチは咄嗟にその腕を掴みとった。
    「いや、メレフ様ッ……だめ、です……、私を、置いていかないで……」
    カグツチ感情が大きく揺れる。感じたことがないような喪失感が頭を埋め尽くし――

    カグツチの脳裏に、ふっと突然ある考えが現れた。
    即座にメレフを地面に寝かせる。その外套の紐を解き、上着の留め具を外してゆき、タイを緩め、シャツの胸元を開き。
    動く余力の尽きたメレフは、ただなされるがままその様子を朦朧と眺める。
    「カグツチ、何を……?手当、など……」
    カグツチは自分のコアクリスタルに手をかざす。

    ――そうだ、ブレイドである自分のコアを彼女に明け渡すことが出来れば――

    「……申し訳ありません、メレフ様。どうか……お許しください」
    カグツチはコアクリスタルの半分を取り出し、メレフの胸の傷口へと分け与えた。
    「……ッカグ、ツチ………」
    半分に分かれたコアクリスタルが、メレフの胸元で強く輝く。エーテルエネルギーがコアを通じて傷ついた肉体に流れ込んでいく。
    急激に力を注がれていく感覚がメレフを襲い、その衝撃で彼女は意識を失った。
    分かれた二つのコアが発した強烈な光が辺りを覆う。
    激しいエーテルエネルギーの流れでカグツチのコアに強い負荷がかかる。それに耐え切れず、カグツチもまたメレフの傍らに倒れ臥した。

    ◆◆◆

    「…………う……」
    「!お目覚めですか、カグツチ様」
    白い壁。白い床。側にいた看護員が、意識の戻ったカグツチに気づく。
    「ここは……」
    カグツチはハーダシャルの救護室のベッドに寝かされていた。
    「皇宮の救護室です。退避中の兵士数名が貴女様とメレフ特別執権官を発見しました。もし発見が遅れていたら……。ご無事でなによりです」
    「無事……、……っ!そう、メレフ様は無事だったの……」
    「え、ええ。重傷を負われていましたが……。快復に向かっているとのことです。特別執権官殿は現在集中治療室におられます」

    その返答を聞き、カグツチの口からため息がこぼれた。彼女は生きていた。安堵すると同時に、かすみかけた記憶を思い返す。
    そうだ、自分は彼女に――
    「……コアクリスタル、を」
    その時突然。鮮明にあの惨状が浮かび上がった。カグツチの顔がたちまち陰鬱な面持ちに変化していく。激しい後悔とともに、様々な思いがカグツチの脳裏を駆け巡った。

    ――そうだ、自分は己のドライバーを守りたかった。だからコアを彼女に渡した。しかしそれは彼女の望んだことではない。自分が命令を無視しておこなったことだ。
    彼女は一命を取りとめた。だが、彼女は自分のしたことをどう思うだろうか?
    特別執権官としてスペルビアのために散ったほうが良かったと思っていたら、最早顔向けできない――

    「カグツチ様、失礼致します」
    「!」
    ノックと共に声が聞こえてきた。
    「……入りなさい」
    慌てて扉の方へ意識を向ける。皇帝の伝令だった。
    「ネフェル皇帝陛下がお呼びです。お体の具合に問題がなければ、カグツチ様から今回の事情を伺いたいと仰せです」
    それを聞いて、カグツチはゆっくりと身体を起こしベッドから立ち上がる。
    「……分かりました。すぐ参上します」


    「……なるほど、そうだったのですね……」
    「はい。これが私のお伝えできる全てです」
    カグツチの報告を聞くと、ネフェル皇帝はしばらく思案する様子を見せた。
    「しかしコアを分け与えたと……そのようなことが……。ですが本当の事なのでしょう。事実、貴女のコアは半分に欠けている。従姉さんの身体にもコアクリスタルらしきものが確認されているようです」
    「……はい」
    カグツチは俯いたまま、皇帝の言葉を聞く。先程の考えが頭から離れなかった。すると皇帝はカグツチの方へと向き、微笑みかけた。
    「カグツチ、従姉さんのことを助けてくれてありがとうございます」
    「!」
    皇帝の言葉にカグツチは思わず顔を上げる。
    「貴女のお陰で従姉さんは命を落とさずに済んだ。それは喜ぶべきことだと思います」
    胸の内が重苦しく濁る。
    皇帝の言葉を聞いてもなお、カグツチの心中はまだ納得し切れていなかった。
    手のひらを握り締め、淀んだ胸を押さえる。
    「……陛下、もったいないお言葉です。
    ですが……、私は……メレフ様を傷つけてしまったのかもしれません」
    皇帝は意外だと言うようにカグツチの顔を見た。
    「何故そう思うのです?」
    「私はメレフ様の命令を無視して行動しました。命が助かったとはいえ、私は愚かでした。メレフ様のお考えを……尊重すべきでした」
    ネフェル皇帝はその言葉を聞き、ふむ、と考え込む。しばらく思案し、再びカグツチへ向き直ると、
    「貴女の気持ちは分かりました。ですが、まずは従姉さんと話をすべきかもしれないですね」
    「そ、それは……!」
    皇帝の提案に思わずたじろぐ。そんなカグツチの背中を押すように、皇帝は優しく言葉を続ける。
    「大丈夫ですよ、カグツチ。従姉さんも貴女を心配していると思います。顔を見せてあげてください」

    カグツチは部屋を出て、メレフのいる治療室に向かって行く。治療室まではすぐに着いた。しかし入室する決心がつかず、彼女はしばらく呆然とドアを眺めていた。
    「……駄目。ためらっている場合ではないわ」
    すう、と深呼吸する。ようやく心を決め、カグツチはドアを開いた。

    ――何をしてでも我が主に償わなければ。
    ただそれだけの想いだった。

    「メレフ様っ……」
    メレフのいるベッドに駆け寄る。メレフはすでに目を覚ましており、ベッドに座ったままカグツチの方へと顔を向けた。駆け寄ってきたカグツチに、メレフは思わず呼びかけた。
    「カグツチ、お前……」
    「メレフ様、申し訳ありませんでした」
    メレフが言い終わる前に、カグツチは即座にメレフの元で跪いた。
    「私はメレフ様の命令を無視しました。あのような出過ぎた真似、許されることではありません。どうか……、どんな罰でもお与えください」
    虚を突かれ、メレフは目を丸くしてしばし跪くカグツチを眺める。しかしすぐにカグツチに言葉を返した。
    「……いや、そんなことはしない」
    「!」
    メレフの言葉に思わずカグツチは顔を上げる。
    「お前は私の命を救ってくれた。あのままだったら二人ともあそこで散り、こうしてスペルビアに戻ることはなかったろう。だが、お前は自分が正しいと思う判断をしてくれた。だからそれでいいんだ」
    「メレフ様……」
    「これを見てくれるか」
    そう言うと、メレフは服のボタンを二つほど外し、首筋から胸元をカグツチに見せた。
    「兵士が発見した時はまだこの辺りに大きく裂けた傷口があったらしい。私ははっきりと覚えていないが、お前は見ているはずだ。腹や手足の傷も殆ど消えている。……お前のコアクリスタルのお陰だ」
    「――……」
    カグツチは息を呑む。確かにあの時、メレフの身体は全身酷い傷だらけだった。それがたった数日で目立たなくなるほどに快復している。コアクリスタルによるブレイドの再生能力が効果を発揮している証拠だった。
    「しかし、メレフ様……」
    だが、一ヶ所だけ傷が残ったままの部位があった。メレフもそこを見やる。
    「……ああ、ここか。ここだけは……残ってしまったな」
    それはコアが埋め込まれた場所だった。
    他の部位はすっかり綺麗になっているのに、そこだけ深く傷跡になったままだった。
    「……そう、だな。理屈は分からんが仕方ないだろう。ここの傷跡だけ消えないというのは……少し残念だが」
    そう言うとメレフはやや惜しむように傷跡を指でなぞった。その仕草にいたたまれなくなり、カグツチは俯く。
    「も、申し訳ありません……そのような……」
    それを見てメレフは ふ、と笑う。
    「いや、お前のせいではない。それにまだ傷ができて日が浅い……きちんと治療すれば目立たなくなるかもしれない。だからカグツチ……一緒にその方法を探してくれないか?」
    予想に反するメレフの言葉に一瞬ぽかんとしてしまった。提案の意味を理解する。こわばっていた表情が少しずつほころんでいく。
    ようやくカグツチの心の淀みが解け始めた。
    「はい……このカグツチ、貴女のために尽力致しましょう」
    やっと笑顔の戻ったカグツチの顔を見てメレフは再び微笑み、胸元に手を当てる。分け与えられた時からずっと流れ込んでくる力の感覚を噛み締める。
    「ありがとう、カグツチ」
    二つに分かれたコアクリスタルが淡く光を放つ。二人の特別な絆を結んだ証とでもいうように。
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