アナザーワールド おめでとうございます!
コロンと転がり出た金色の玉。割れるくす玉。大きな拍手。なにもかもがスローモーションで見えていた。
「なに?陣平ちゃん、俺なにしちゃったの?」
戸惑う萩の向こうに見えたのは『一等 湯気たっぷり温泉旅館、二泊三日の旅』という文字。ああ、なんだかメンドクサイことになった。遠い目をする俺の名前を、萩が何度も何度も呼んでいた。
「すごい!でっかい旅館!」
陣平ちゃん見て見て、と俺の服の裾を引っ張る萩はどうにも楽しそうだ。商店街の福引きで萩が一等の温泉宿泊券を引き当てて一週間、俺たちは驚くべき早さで温泉街へと足を運んでいた。
「俺、温泉ってはじめて!」
にこにこと笑顔を振りまく萩は、周囲の客の目を大いにひいていた。サキュバスとやらの力もあるのだろうが、それを差し置いてもこいつは面がいい。
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