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    コルテナ

    @kortena_ja

    20↑。文字書きです。最近金カム関連(勇尾)など書いてます。(元はDQ11ホメグレ等用。他シリーズはククマル/モブマル関連など)。

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    コルテナ

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    『なんでも可愛い勇作さん』の続き。現パロ勇尾です。相変わらずイチャイチャしてます。

    #勇尾
    Yusaku/Ogata

    なんでも可愛い兄様「兄様、見てください! とても可愛いですね」
    そう言って、目をきらきらと輝かせて見つめた弟を見て、百之助は眉をきゅっと寄せた。
    水族館の、みやげものを売る一角は、薄暗かった水槽になれた目には、いささかまぶしい。パステル調の壁紙、こどもたちを引きつける、デフォルメされた魚や動物たち。親の袖を引いて、あれが欲しい、これが欲しいとねだるこどもたち、ぬいぐるみをとっかえひっかえして、どれが可愛いだのなんだの言い合う女子高生たち。自分たち、というより、もっぱら自分の場違いさを思い知らされるような気がする。だから、表情が険しくなったのだ。決して、そこに並ぶ何よりも、弟兼恋人の笑顔がまばゆく愛らしいから、緩みそうになった顔を引き締めようとしたわけではない。そうやって自分を納得させながら、抜群の反射神経、頭の回転の速さを無駄遣いして、百之助はすこしばかり不機嫌そうな顔をしてみせた。
    「あ、あにさま、あれ」
    「駄目ですよ」
    まだ何も言わないうちから、勇作の言葉を遮る。勇作の視線の先には、透明の大きな球体。その中には、吹き上げられてぐるぐると舞い上がる、たくさんの三角形の赤い紙。いわゆる、スピードくじだ。後ろの棚には、景品とおぼしきぬいぐるみがずらりと並んでいる。手のひらサイズのちいさなもの、勇作のあたまよりも、もう二回りほどおおきなもの、それから一メートル以上はある特大サイズ。
    「駄目ですか? でも、あのエイ、兄様の目と似ていてとても可愛いですよ……」
    エイとコツメカワウソ、二種類が選べるらしい。どちらかというと、世間一般に見て可愛いと思われるのはコツメカワウソの方だろう。そしておそらく、コツメカワウソを選んだら、兄は少々へそを曲げそうな気配もある。わかりやすく可愛いもの、誰から見ても美しいものを選ぶ勇作を見ると、百之助はいつも、少しだけ拗ねる。でも、勇作はそんな兄の心中をはかったりはしない。本当に、兄に似ていると思ったから可愛いと思ったし、欲しいと思うのだ。そしてそれを、百之助だってわかっている。でも、今回は首を横に振った。
    「駄目です。……大体、よく考えてください。勇作さん、あなたがあんなもの引いたら、大体一等を取るでしょう。俺にはわかる。あなた、こういうときに絶対外さないですからね」
    勇作の強運は、百之助でなくてもよく知るところではある。むやみに懸賞やくじに参加したりはしないが、ここぞというときに大当たりを引くのだ。これが祝福されて生まれたこどもなのだ……とじっとりとした目で見つめる百之助の姿まで大体セットで。
    「そんな、兄様……ただのスピードくじですよ。中身が見えるわけでもありませんし、絶対なんてあり得ません」
    「ハッ、当たり前でしょう。中身が見えるなら、俺が絶対に一等を取ってやりますよ。いや、そういうことじゃない」
    百之助の動体視力は異常に高いので、中身さえ見えるなら、絶対に一等を取るだろうと勇作も思った。兄はくじ運は大体ないのだが、例えばクレーンゲームや金魚すくいの類いは、やたらとそつなくこなしてしまう。そうしてどんなもんだい、と景品を差し出す姿が、勇作は最高に可愛いと思っている。
    「あんなクソでかいぬいぐるみ、背負って帰るんですかこのクソ暑い中。あのエイ、黒地に白いブチですよ。熱をどれだけ吸収すると思ってるんですか。炎天下に持って帰るなんて、アホのすることです」
    「大丈夫ですよ。もし当たったら、俺がちゃんと持って帰りますから。兄様に暑い思いはさせません」
    おそらく、兄が並べる文句は、本当の理由と違うところにある。そう察しながら、勇作は冷静に返答する。兄の目が泳ぐ。
    「……だいたい、あんなものどこに置くんですか。手のひらサイズならともかく、あんなでかいの、置くところに困ります」
    「抱き枕にちょうど良いサイズですよ。ベッドに置いたらいいのでは」
    兄様のお昼寝用にするのもいいな、と勇作は想像する。猫のように、身体を丸めて昼寝する兄と、黒いエイ。想像するだに可愛い。絶対に写真を撮ろう。目尻を緩ませていると、百之助が小さくうなった。
    「……ベッドが、せまくなるのは、嫌です。ただでさえ、でかい貴方がいるのに」
    聞き逃すほどのちいさな、うなるような声でささやく兄の言葉。勇作の胸が大きく跳ねた。あまりにも、可愛い。いや、というよりも。
    「……ベッドが狭くなるのは、いやですか」
    身体を、壁に寄りかかる兄にぐっと近づける。昼のひかりの顔で笑う勇作から、にじみ出る夜の気配に、百之助は息をのむ。そのさまが、あまりにも無防備で可愛らしく、勇作は胸を高鳴らせるのだ。
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