美しく鈍い光を放つ、茶色と黄の鼈甲でできた櫛をプレゼントされたのは、もう春が来たと言ってもいいくらい暖かい日の朝のことだった。まだ寝ぼけながらも顔を洗って少しぼーっとしている俺の前に、それはすっと差し出された。
「はい、エドワードさん。」
同居人─アルフォンスが差し出した櫛を見て、俺は首をひねったのだ。
「はい、って……そもそもこれなんだよ。櫛?これを俺に?」
アルフォンスはいつものようによく言えば優しく、悪く言えば呑気そうな笑顔で微笑んだ。
「うん。これ、誕生日のプレゼントにと思って。」
益々分からない。
「誕生日って、オレの誕生日もう過ぎてるし。」
そう言うとアルフォンスは、呑気な笑いを引っ込めてすねたような表情になった。
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