しぇあはぴ?「ジュンくん。……しぇあはぴ?」
「……え、」
数ヶ月前、あんずさんの暮らしていた家の更新に合わせて始めた二人暮らしも少しずつ慣れてきた、と思っていたのに。そんなことは関係なく、オレはいつまでだってこの人に驚かされることになるらしい。
「……えっと。今日、ポッキーの日だからって後輩の子が配ってて。せっかくもらったからジュンくんもどうかなって」
オレが動揺している間に彼女の口にくわえられていたそれは食べきられて、何事もなかったかのように開いた袋を差し出される。……いや、さすがにそうは行かねぇでしょ。
くわえながら話したせいで唇に残ったチョコレートがよりその場所を美味しそうに見せていて、本当は今すぐにでも舐め取りたいけど。ここはせっかくだし、彼女の提案に乗ることにする。ゆっくり時間をかけた方が、獲物は美味くなる気がするし?
「ん。……しぇあはぴ、どーぞ?」
「いや、ぅ……その、できごころ、でした、ごめんなさい」
「……いやいや、あんたから始めたんだからちゃんと責任取ってもらわねぇと。……ほら、『オレとシェアハピ、しません?』」
撮影のことを思い出して、アングルや声色をできるだけそれに寄せてみる。目の前の彼女の頬がみるみる染まっていくのを見て、思わず喉が鳴った。
あんずさんって結構、アイドルのオレのことも好きでいてくれますよねぇ。
「ぅう、ずるいよ、ジュンくん」
「なんもずるいことねぇでしょ。むしろ煽るだけ煽っといてなかったことにする方がずるいしひどいと思いますけどねぇ、オレは。……ほら、はやく」
一度離したそれをもう一度くわえて顔を近づければ、あんずさんは観念したように、ほんの少しだけ反対側をくわえてくれた。……いや、照れ顔で棒くわえるあんずさん、可愛すぎねぇですか。しかも上目遣いのオプション付き。
「……ん、ぅ……!? ちょ、じゅ、っん、ぅう、」
「ん、……っは、ん…………かわい、ん……ぅ」
ずっと見ていたい気持ちと早く触れたい気持ちが天秤にかけられて、ほんの少しの差で後者が勝ったから、一気に食べ進めて口付けた。
驚いたあんずさんの唇を舐めてから中に入り込んで好きなように動けば、息苦しいのか涙目になった目と目があう。やめて欲しいのかもしんねぇけどそれ、そそるだけなんで。残念ですねぇ。
「……っ、んぅ、は、ぁ…………じゅ、んくん、もう、」
「……はは。あんたが蒔いたタネなんで、恨まねぇでくださいね?」