Der Zauberlehrlingラインハルトを見上げる少女の真っ黒な瞳に期待が詰まっていた。「一口で全部食べないといけないのよ。 零さないでね」何度も促される声を聞きながら、ラインハルトは先ほど少女が手のひらに乗せてくれたチョコレートを手に取った。 丸い塊はラインハルトの親指一本分の大きさだった。 すでに体温で溶け始めているチョコレートからは、苦いというよりは甘い匂いがする。
いつの間にか静かになった少女は、息を切らしたままラインハルトをじっと見つめている。 焦っているというよりは、ただ単にラインハルトがチョコレートを食べるかどうかに全神経を集中しているようだ。 頬を赤く染めて期待している様子から、何か大きな悪戯をしたのだろうと思いながら、ラインハルトはそっと口角を上げる。 よく見ないとわからない笑顔は、司祭の顔を「悪ふざけを許す大人」であると同時に「共犯者である子供」に変えてしまった。 そしてすぐに、一見ごく普通のチョコレートがラインハルトの口の中に消えた。
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