二人がいる屋根裏部屋には窓がなかった。 しかし、どこから来たのか分からない微かな光が壁を伝って部屋の中を薄暗く照らしていた。 ぼんやりとした物体の輪郭の上に黄金色の光が反射する。 その光を放つ男は今、部屋の闇に溶け込んだ影の隣に立ち、彼の話に耳を傾けていた。
「さて。 魔法の基礎、最も根源的な土台を築こう、と言えば、言葉は明快で明瞭なようだ。 しかし、それはいったいどこからだと思いますか、獣殿? あなたの高見見を聞きたいのです」
「卿は私に世界の秘密を教えると誓った。 そのためにどのような知識が必要かは、卿が最もよく知っているはずだ」
影が床の上に腰を下ろすと、長い黒髪が幕のように垂れ下がり、表情を隠した。 密かな笑い声だけが、部屋のどこからともなく聞こえてきた。
「言われた通り、あなたの心は最初からこちらに惹かれ、すぐにこの先にある秘密に触れたいと言葉で言われた。 その上で、私たちの誓約は立てられたのだ。
だから、今日を記念して、ここに私たちのスタートラインを切りましょう」
そして影は手に持っていたチョークで床に直線を引いた。 それは一種の魔法陣だった。 単に目に見えるところで途切れることなく、無限に続き、現実と線の向こうを分ける直線が部屋の中を二つに分けた。
道化師の手品など信じなかった男の脳に、その線が実体を持つ境界として鮮明に刻まれた日だった。
ずっと前に引かれた線を前に、ラインハルトは感慨に浸った。 以来、彼は何度も影のような男を邸宅に招き、その男が語る"秘密"に取り返しのつかないほど近づいた。 今、彼は最初に線を引いた方角の反対側に立っており、その向こうに渡ることは不可能だろう。
今この場にいない影のような男を思い浮かべながら、ラインハルトは身をかがめた。 手袋をはめた指先で境界をたどると、痺れるような感覚が指を伝って徐々に広がっていく。 コントロールと呼べるほど強烈なものではなかったが、優しくなだめる程度にはなった。 まさにその影の声が屋根裏の中に響き渡るようだった。
ここを渡った先にあなたが求めるものはない。 正しい方向へ、どうか戻ってほしい。
これが出発線であると同時に指示線であるならば、そして影が誓ったように彼との約束を忠実に守れば、彼らは平行した方向に進むことになるだろう。 一つの場所から並行して出発したのだから、同じ方向に進んだ末に同じ目的地にたどり着く結果が保証された巧妙な方法。 同時に、その過程で一度も顔を合わせなければ、その事実としてこの方向が正しいことを確認できる方法だった。
「カール、卿の望みは本当にそれなのか? 私はそんなに友という名に恥じない男かな」
せめてこうして進んだ先に未知があればいいのに、とラインハルトは笑い声でつぶやいた。
あの日、邸宅を後にした後、ラインハルトは二度とその家を訪れなかった。 いつもその場所にある出発点を振り返る必要はない。 進んだ先にある結末を求めるだけだった。