失恋旅行制服を着て友達と二人きりで観覧車に乗りたい。 高校卒業を間近に控えたラインハルトとしては、そんな青春映画のヒロインのような願望を抱いているわけでもないのに、今日の一日の終わりはこの姿で締めくくられることをずっと知っていたような気がした。 たぶん、即興で通学路を外れてバスの切符を切った後、バス停で偶然会った友人と並んで座り、行き先候補の中からこの遊園地を候補に挙げるずっと前からだ。
派手に観覧車は回り、ふと見た窓の外から地面が徐々に遠ざかっていく。 出発時にラインハルトの隣に座り、熱狂的な熱狂者のように戯言を連発していた友人は、今や向かいの椅子にずれて座っていた。 そっとラインハルトを追う視線はいつものように意図を隠しているが、密かに笑う口から繰り出される妙な戯言に比べれば、むしろわかりやすい。 明らかに目の前にいるにも関わらず一歩引いて隅の影に溶け込もうとするような、たとえ二人が向かい合って座り、長い足が絡み合い、膝をぶつけたとしても今と大差なかったであろう友人の距離感は、時折、彼を引き寄せようとする卑劣な挑戦精神をラインハルトの中に呼び起こした。
しかし、今日はその時ではないようだった。 ラインハルトは気分のせいか、哀れそうな顔をしているパリッとした顔に向かって、大人げない一言を投げかける。
「あまり落ち込まないでね、カール」
「......なぜそうおっしゃるのですか?」
意表を突かれたように反問する呆れたような男に向かって、ラインハルトは肩をすくめる。 他人の恋愛史に口出しするつもりはないが、カールが毎日口にしていたあの女の話を今日一度もしていないのに、ラインハルトが何も気づかないというのもおかしな話である。
もちろん詳しい経緯は不明である。 長年の片思いの高校生が卒業前に勇気を振り絞って告白して断られたという簡単で論理的なシナリオは、カールという男には似合わない。 カールがそこまで素直でかわいい恋心を抱いていたら、事態は今日に至ることもなかったはずだ。 しかし、この男は毎回、まるで隠された秘境の価値を知っている唯一の人であるかのように、その女性を賛美するのに精一杯で、ほとんど文化財的価値を崇拝するように振る舞った。 ラインハルトから見れば、実に興味深い振る舞いであった。 相手を愛していると公言しておきながら、抱きしめるどころか指一本触れようとしないというのは、ラインハルトにとって全く理解できない態度だったからだ。
そうして、やや頓珍漢な考えをラインハルトが伝えたとき、カールから意味深な返事が返ってきた。
「実は、あの女はこの世に存在しない。 少なくともこの世にはね」。
"それはどういうことだ?"
ラインハルトは思わずカールの方に身を乗り出した。 それに呼応するかのように、カールの声はいつの間にか秘密を囁くような音色に変わった。
「あの女はあなたがいるところにいる、正確には、物理的な実体があるあなたと私がいるところにいるのです」。
観覧車が回転し、彼らの乗ったカーンが頂上に上がると、金色の光芒が浮かび上がった。 窓の外には夕日が沈む遊園地の全景が広がる。 一面黄金色に染まった街が足元にあり、カールの顔にかかる光が、不自然に軋むグリッチを照らす。 ラインハルトがずっと見てきた顔だった。
「あなたは、この模写された世界の断片の中に投影された一種の片鱗です。 誰かの意図によって役割を与えられ、シミュレートされた役柄です。
ここで私は役柄以下の楽屋であり、あなたの具現化されたあらゆる面から逆算されることによってのみ存在する虚構の原因であり、因果関係が逆転した副産物に過ぎない。
世界の秘密を解き明かし、こうしてあなたを啓示するのも私の機能、いや、これこそが私がここに存在する理由なのです」。
カールが言葉を続けるにつれ、ノイズが広がり、周囲を溶かす。 ラインハルトは座席に座ったまま、足元が千里の虚空になったのを不思議そうに眺めていた。
"役者と楽屋って。 私の行動に影響を与えた存在なくして私が成立しないなら、シミュレーションの中に結果である私を具現化することで、原因も自動的に存在するようになったということか。
まだ説明していないことがある。 もし私が役者だとしたら、私の役割は何だろう?
そう尋ねたとき、ラインハルトは、カールがノイズの下で笑みを浮かべたと思った。
「君がここにいる理由は、誰かを選ぶことだ。 決着をつけるために、用意された候補の中からたった一人を選ぶこと。 そして、ついに君によって、この用意された物語を終わらせるんだろう、君は。
あるいは、今のように誰も選ばず、皆を慈しんで無限に同じ時間を繰り返すことを望んだのかもしれません。 この世界を作った者は、それがあなたらしいと思ったのかもしれません。
ぜひ思い出してみてください。 一年前の今日、あなたが何をしていたか覚えていますか? 三年前はどうでしたか? 十年前はどうでしたか?"
よくよく考えてみると、日付ごとに不自然なくらい正確な記憶が浮かんできたが、ラインハルトは自分が「高校2年生だった」とか「7歳の時に親と旅行に行った」と答えるよりも、「毎年今日、高校卒業を控えて遊園地に来た」と答えるのが一番事実に近いと感じていることを自ら認めた。 10年前も彼は今と同じ姿で、卒業もせず、年齢もまったく変わらず、再びこの場にいた。 周りの少年少女を苦労して区別しようとせず、彼らの誰かが注いだ熱烈な愛情にも、他のすべての人にするのと同じ平等な愛を送りながら。
ラインハルトがその考えを整理して口に出す前に、カールは答えを聞いたかのように言った。
"もう、制服は卒業しましょう。"
白っぽい声が、観覧車の中に映し出された夕日を削ぎ落とし、見苦しい世界の鉄骨を露わにする。 不連続と確率の世界、0と1で作られたモジョたち。 ラインハルトは疑問を飲み込まなかった。
"私たちがこの中で作られたのなら、どこへ行くことができるのだろう? 物理的、ましてや精神的な実体もないのに。"
「確かにあなたも私も、一人では出られないでしょうね。
世界に開いた穴から吹き荒れる強風を受けながら、ラインハルトはカールの言いたいことを理解した。 存在はお互いを定義するものなのだ。
やがて片方の壁面が消え、真っ白な虚空だけが残った観覧車が地上に降り立った時、中にいた二人は、あっけなく消えていた。