玄関でスタンバってました ぼやけた視界に写るのは瓦礫となり果てた残骸と膝の上にて横たわる至極色。相変わらず派手なものが好きな幼馴染がそっと目を閉じていく姿だった。「もう――」亡骸を腕に抱きなら誓う。何度も、何度も。次第に冷たくなっていく体温を少しでも戻すべく着物を撫で摩擦を起こすが、結局は体温の低下を止めることはできず、最期はとん、とん、とまるで寝かしつける母親のように動かした。
「っ、」
微睡む視界が一気に明るくなり、ちりちりと双眸を刺激する。夢、か……と気づいた時には既に遅く、はく、と沢山の酸素を吸い込んでしまったせいか軽く咽せながら、天井を見据えた。「……ざまァねえな」拍子に目尻から流れる雫に苦笑しながらも、隣へと腕を伸ばして暖を求める。しかし、左手に触れたものは求めていた体温ではなく、人のいなくなった敷布団のうんざりするほどの冷たさだった。
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