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    kitanainuko

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    kitanainuko

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    古賀くんの、やつ。おわるきがしない

    ねこはなかない。ねこのこえがした。

    ゆらゆらと浮かび上がらないギリギリの水面下を漂っていた意識は易々と浮上し、瞬きを2回繰り返す。星明かりだけを頼りに周囲を把握することには、もう慣れた。
    完全に覚醒しきった頭をゆるりと振って、己が目を覚ますことになった原因に自嘲する。
    こんなところにねこなんているわけが無いのだ。血で汚れた泉も、硝煙交じりの砂塵も、鼓膜を破る爆発音も、生物が住むべきところではないこの荒野に、いるわけが無い。

    ──まぁ、そんなところに己はいるのだが。諦めに似た含み笑いを零し、枕代わりのアサルトライフルを抱え直す。元より寝付きは悪い方であったが、ここに来てからはさらに悪化した。ふわふわと漂う意識は1度浮かび上がればその夜はもう沈むことは無い。さりとてそこに問題は無いが。寝転べば体力は回復するし、第一眠れたところで悪夢とも言えない何かを見て明け方飛び起きる羽目になるのだ。大差は無い。

    手持ち無沙汰になって何の気なしに髪を梳く。梳く、と言っても血と泥がこびり付きガシガシになった髪に指が通るはずもなく、ただぶちぶちと引き抜くだけの行為。以前までその頭を守っていたヘルメットは、一昨日落とした際に割れてしまった。落としただけで割れるような薄っぺらなプラスチックのそれは、子供のおもちゃの方がまだマシだった。

    ここに来てからどのくらい経ったのだろうか。爆風で狂った時計は3時をさし続け、登った太陽の回数を記していた紙は突風に攫われた。砂嵐を響かせるインカムはとうの昔に捨てた。

    所属していた分隊が壊滅したのが遠い昔のようだ。若さゆえか殿を押し付けられた恵介を残し、皆投げ込まれた手榴弾で吹き飛んでしまった。後に残るは誰のものかも分からないぐちゃぐちゃに入り交じった肉塊と血と、鈍く輝くドッグタグ。最小限の大きさのはずのそれは、いつの間にかポケットを膨らませ、リュックの底が見えなくなった辺りで拾うのをやめた。
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