村の子のはなし
空が燃えていました。
それが恐ろしくて、ある子供は目を、耳を、塞ぎました。
かすかに聞こえる火の音も、それに紛れて聞こえる声も、すべて覚えがあったのです。
誰か来てくれ、家が燃えてる。呼ぶ声に、表へ顔を出しそうになりました。すぐに母に止められて、黙っていなさいと叱られました。なにを言われても無視しなさい、そうしないと仲間はずれにされてしまうから、と。
子供は、恐ろしく思いました。そう詰め寄る母の剣幕も、それに従ってひとを見捨てる自分のことも。
そんなことを言われたって、どう過ごしていたって居心地が悪いものでしたから、意味もなく手をこすり合わせたりしました。
そうこうしているうち、彼が、とうとう我が家の前にまで来てしまいました。子供の名前を呼ぶ声が聞こえます。塞いだ扉ががたがたと音を立てました。だって、子供は彼と仲が良かったのです。昨日だって一緒に遊びました。かくれんぼをしておにごっこをして、冠の編み方を教えたのですから。彼は、にかりと笑って喜んでいましたし、お礼を言ってくれました。
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