どこかですれ違っているかもしれない話「はいこれ、頼まれてたやつ。これでこの仕事は終わりだね?」
「はいよ。ばっちりだ」
樫尾 薫が依頼書に記載された物品を手渡すと、馴染みの情報屋まがいの中年の男――よくこちらに仕事を回してくれる――は苦笑した。
「にしても、お前もよくこんな仕事長く続くよな」
「別に? 性に合ってるし、お金に困らないし。いい仕事じゃない?」
「はっ……そうかよ」
男は手渡された物品を丁寧にしまいながら、そうだ、と思い出したような声を上げる。
「最近、また物騒みたいだぜ。仕事柄しゃーねぇかもしれねえけど、あんま遅くまでぶらつかない方がいいかもな」
「はは。こんな仕事してて、物騒じゃなかったこと逆に無くない?」
「そりゃそうだがな。……なんでも、出るらしい」
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