愛し合っていた二人は、その1日しか会えないのだという。再会を喜んだその後は、またその日の到来を待つのだ。指折り数えて、ただその日を。
「…この二人、本当に愛し合っていたのでしょうか?」
理解が出来ないと、子羊くんは首を傾げていた。きっと唯一を想い続けるなんて素敵な話ですねとでも言い出すと思っていたのに。
「おやおや、不満そうですね。子羊くんは、このお話は好きではない?」
「子羊じゃありません。いや、好きとか嫌いとかではなくて、疑問が強くちらついてしまって…。この二人、本当に愛し合っていたんですよね?一年も唯一を想い続けられるぐらい、強く。」
難しい顔をしてブツブツ言っている子羊くんに、何をそんなに引っ掛かる必要が?と思う。
遥か東の地に伝わるおとぎ話、今日は再会を喜ぶ二人についでに此方の願いを叶えて貰おうという日らしい。君も書いてみます?と笹に飾る短冊を渡そうとしただけだったのだが。
「愛し合っていた相手と引き離されて、この二人はよく耐えれますね。それに会えるのは1日だけって、僕には耐えられそうにない。…絶対に、嫌だ。」
伸びてきた腕に、強く抱きしめられて。おやおや甘えん坊さんだなんて言いながら、抱きしめ返してあげた。
ふむ、君が引っ掛かっているのはそこですか。
「二人が引き離された要因は、完全に自業自得だという説がありますね。与えられた職務を放棄したから、その罰らしいですよ。二人が、引き離されてしまったのは。」
「罰…。」
「ええ、罰なのですから粛々と償っているだけなのでは?もしくは、再会出来た喜びに誤魔化されてるのか…。まぁ、所詮おとぎ話です。」
子羊くんの頭を撫でて、言う。
「会いたいのなら、会いに行けばいい。川が邪魔なら橋を、立ちはだかる者があるのなら退けてしまえばいい。…だって、そうでしょう?」
何も罰される事はしていないのですから、君も、そして私も。
抱きしめてくる腕の力が、少し強くなった気がした。